COLUMN

031 水島精二・虚淵玄コンビの『楽園追放』を観た!(2014年9月12日)

 昨夜、新宿バルト9で新作劇場アニメ『楽園追放』のゼロ号試写を観てきた。ゼロ号試写とは、フィルム時代で言えば最初のプリント(ゼロ号プリント)による上映のことであり、多くの場合は、それに手を入れたものが完成品となる。ではあるが、昨夜のゼロ号試写は関係者のためのものではなく、大勢のファンが参加したイベント仕立ての上映会だった。これから細かな修正が入るはずだが、上映されたものは、完成品だと言われても信じてしまうくらいの仕上がりだった。
 『楽園追放』は監督・水島精二、脚本・虚淵玄によるオリジナルアニメーションである。3DCGを用いて作られており、製作は東映アニメーション。演出は京田知己。原作としてニトロプラスと東映アニメーションがクレジットされている。
 まだ公開は先なので、具体的なことは書かないが、若いアニメファンに安心してお勧めできる作品だ。サイバーSFに慣れていない観客は、設定を複雑に感じるかもしれないが、キャラクターの言動を追いかけていけばドラマに入っていけるはずだ。いままでアニメやSFに興味を持っていなかったティーンの観客が、これをきっかけにして、アニメやSFのファンになるかもしれない。そう思えるような作品だった。ヒロインのコスチュームとプロポーションはセクシーであるが、それ以外はいたって健全。アダルトな作品が苦手な方も安心してどうぞ。
 主要キャクターの3人を演じるのは、釘宮理恵、三木眞一郎、神谷浩史。ゼロ号試写の舞台挨拶で水島監督が、作品作りの初期段階から、それぞれの役について釘宮さん、三木さんをイメージし、脚本を読んでいくうちに神谷さんの声が浮かんできたと語っていたが、確かにこの3人はハマり役だった。芝居のきかせどころもたっぷり。役者の存在感が大きな作品だ。
 3DCGは、手描きのアニメを再現する方向性のものとしては、現状での最高峰だろう。一般の観客が「3DCGか手描きか」を気にしないレベルに到達している。キャラクターの芝居もいいところがいくつもあった。あるアクションシーンについて、どう見ても手描きにしか見えないところがあったので、試写のあとで顔見知りの関係者に確認したのだが、そのシーンももちろん3DCGで作成されているのだそうだ。ところどころ明らかに3DCGだと分かる表情があり、それを見つけて「ああ、やっぱり3DCGで作られているのだな」と、逆に安心するくらい。
 メカアクションも見応えがある。動きだけでなく、アクションの構築が巧い。クオリティについてははもちろん、ボリュームの点でも満足いくものだった。ストーリー構成やキャラ描写の一部にも感じたことだが、メカアクションへの力の入り方とこってりとしたテイストに、1980年代のOVAに通じるものがあった。むろん、いい意味でだ。

■商品リンク(Amazon)
『楽園追放 Expelled from Paradise Blu-ray』(完全生産限定版) (キャラクターデザイン齋藤将嗣描き下ろしイラスト布ポスター付)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00NE93HIG/style0b-22/ref=nosim

■INFORMATION
[新刊情報]
「宇宙戦艦ヤマト2199 結城信輝 原画集」発売中!!
http://animestyle.jp/news/2014/09/09/7816/

[アニメスタイル ONLINE SHOP]
「宇宙戦艦ヤマト2199 結城信輝 原画集」注文受付中。他にも「少女革命ウテナ画集 The hard core of UTENA」、
『カードキャプターさくら』資料集、「月刊アニメスタイル」など、アニメスタイル関連書籍を販売中です。
http://animestyle.jp/shop/

[アニメスタイル・イベント]
2014年9月14日(日)
トークイベント「第89回アニメスタイルイベント 原口正宏アニメ講義vol.2
商業アニメを作り上げてきた4大河とその支流たち」
http://animestyle.jp/2014/08/25/7646/

2014年9月15日(月・祝)
アニメスタイル販売会PART2
http://animestyle.jp/news/2014/08/28/7702/

2014年9月28日(日)
トークイベント「第90回アニメスタイルイベント
1300日の記録特別編 ここまで調べた『この世界の片隅に』4」
http://animestyle.jp/2014/08/26/7661/