小黒 さらに、本筋ではない話をうかがいます。何に驚くかというと、この「佐藤順一の昔から今まで」の第1回で「西尾大介さんが『ガンダム』の話をするのについていけなかった」と言ってた佐藤さんがですね。
佐藤 うん。
小黒 ガンダムパロディを始めた事ですよ!
佐藤 そうですね(笑)。だから、『ケロロ』をやってるうちに、『ガンダム』は相当詳しくなりましたよ。
小黒 1話を観返すと、フラウ・ボゥが爆発に巻き込まれるところをちゃんとコピーしてるんですよね(笑)。
佐藤 そうなんですよ。凄く頑張ってやってるんです(笑)。
小黒 職業人として、「やらねば!」と(笑)。
佐藤 そう。出てくるのはガンプラだけれども、パロディ元の『ガンダム』で拾えるとこは拾っといたほうがよいのではないか、というふうに思って。色々と観てみたところ、「あっ、ハロを抱えて爆風に煽られてる。じゃあ、ハロっぽい物を持たせとくといいかな?」と、意味なくスイカを持ってる(笑)。
小黒 他にも佐藤さんのコンテ回で、キシリアのセリフを言わせるために、キシリア役の小山茉美さんを呼んでいますよね(第9話「夏美 恋の行く手に来るクルル であります/日向秋 ダイナマイトな女 であります」)。あれは、あのセリフだけのために呼んだんですか。
佐藤 そうです。某魔法少女のパロディもやってもらっていて。
小黒 劇中の誰が言ってるのかよく分からないセリフ(編注:クルルのアイテム「ジンセイガニドアレバジュウ」の効果音)ですね。キシリアネタで呼んだけど、折角だから、小山さんが演じた魔法少女もお願いしたのかと思いました。
佐藤 両方お願いするつもりで、パロディを入れていると思います。「断られるかもしれないな」と思いつつでしたね。実際にお願いしても、スケジュールや様々な事情でオリジナルの役者さんに断られた事もあったんです。その時は別のキャストでやっていますね。一応、オファーをして、やってもらえる時はやってもらってるけど、駄目な時は別の人で、というぐらいのスタンスなんで(笑)。
小黒 サブロー先輩が石田彰さんなのは、あのキャラクターのパロディがあるのを見越してのキャスティングなんですね?
佐藤 あれはそうですね。サブロー先輩のキャラクターとしても石田さんであれば間違いないだろうし、後々パロディも成立させられると。草尾(毅)さんに関しても「左手は添えるだけ」が後々にあるので(笑)。
小黒 それで言うと、ケロロ小隊の中田(譲治)さん、子安(武人)さん、草尾さんというのは、相当凄いキャスティングですよね。
佐藤 そうですね。しっかりとキャラを作ってくれる人という事で、音響監督の鶴岡(陽太)さんと相談して、「これで間違いないよね」っていう感じでお願いしてるはずですね。渡辺久美子さんは、僕のほうから提案してます。最初はスケジュールが合わなかったんだけども、「いやいや、渡辺さんしかないんで」と言って、ちょっと無理を言って入ってもらった。
小黒 渡辺久美子さんって、これ以前にこういうキャラクター系の役があったんですか。
佐藤 僕が渡辺久美子さんを最初に認識したのって、『ヘリタコぷーちゃん』なんですよ。
小黒 そうか、そうか! あれが渡辺さんか。
佐藤 『ヘリタコぷーちゃん』を観ていて、「あれ? なんか面白いな」と思っていましたね。タバックの廊下で見掛けた時も「なんか面白そうな人だな」と感じていたので、「ケロロどうかな?」と思ってオファーしたんですけど、ちょうど当時やってる別のアニメーションがまだ続いていて、「スケジュールがバッティングしているのでできません」と1回断られているんですよね。
小黒 なるほど。
佐藤 それで、他のキャスティングも考えたんだけど、やっぱり渡辺さんがベストに思えて「もう1回、渡辺さんに頼んでほしいんだけど」とお願いして、それで「スケジュールを調整すればできそうかな」という事になって、やってもらったんですよね。
小黒 小桜エツ子さんも、佐藤さんの推しですか。
佐藤 そうです。「タママは小桜さんで間違いなさそうだな」っていう感じでお願いして。ナレーターの藤原(啓治)さんは、『カレイドスター』の時にカロスをやってくれてるんですけど、藤原さんがアフレコのテストの時に面白アドリブをやってたんですよ。本編では絶対使われない、テストだけの面白ネタが楽しかった(笑)。「そういう拾い方ができる人だな」と思って、「ナレーションは藤原さんに」と、僕のほうからお願いしたんですよね。
小黒 さらに聞きますけど、能登(麻美子)さんはどなたのキャスティングなんですか。
佐藤 当時、フッと思い浮かぶキャストの候補の中から、能登さんを選んだのだと思います。鶴岡さんも「能登さんかな」と言っていた気がします。「モアちゃんは誰にしよう?」ってあんまり悩んだ記憶がないので。
小黒 この頃の能登さんは若手で、レギュラーが増え始めた頃ですね。
佐藤 その前に『ゲートキーパーズ』で主人公の少年時代の役をやってもらっているんですよ。それから、記憶が正しいか分かんないんだけれども、「こういう癒し系みたいな、ふんわりキャラクターなら、今は能登だよ」みたいな事を鶴岡さんが言っていた気がしますね。
小黒 なるほど。
佐藤 それで「多分、間違いないだろう」と思って、お願いしてる気がする。原作にモアちゃんの元になった女子高生の不良が出てくるんだけど、その役がどのぐらいできるのかという事だけが分かんなかったけど、それについては「できなかったら、できないなりにも面白いかな?」みたいなところもありました。夏美はオーディションしたかもしれないけど、こうしてみると『ケロロ』のキャストは、主役以外はほぼほぼ決め打ちですよねえ。