5月1日にトークイベント「第114回アニメスタイルイベント2時間で語るアニメ様の30年」を開催した。今年で、僕はアニメ雑誌ライター生活30周年。どんな事をやってきたのかを振り返るトークイベントだった。自分の事を語るイベントを自分で企画するなんて、どんなに自分が好きなんだと突っ込まれそうだが、実はそうでもない。僕は自分の事はそんなに好きではないのだ。ただ、自分がやった仕事は好きだ。
トークの最初の1時間で、アニメージュで仕事を始めてから数年間の話をした。30年分を均等に語るとメリハリがなくなるだろうと考えて、お客さんがあまり知らないであろう初期の仕事をクローズアップしたのだ。
イベント前に、久しぶりにその頃の記事を読み直したのだけれど、あまりにも今と変わらないので驚いた。僕が最初にコラムを書いたのが、アニメージュの1987年2月号(vol.104)で、テーマは『北斗の拳』97話、『めぞん一刻』37話。『北斗の拳』の方では「この回唯一のケンシロウのアクション、20秒もある『あたた』のまわり込みのカットは、合田浩章さん。絶妙のタイミングと力強い描線。拳が悪人に当たる瞬間にエフェクト(デザイン画)が入るのも大変気色よく、思わずコマ送りしてしまう」なんて書いている。『めぞん一刻』の方では、『エースをねらえ!』のパロディセリフが島田満の脚本らしくないと指摘した上で、脚本の後でアレンジが入ったらしいと書いている。若書きであり、危なっかしい原稿であるけれど、やりたい事は基本的に今と変わっていない。ちなみに当時の僕は22歳だ。
同じ号で、当時『ドラえもん』の各話演出として傑作を連発していた原恵一さんに取材をしている。これが僕にとって、初のアニメ雑誌の取材となった。最初の取材から一人でアポ取りをして、一人で取材をして、一人で原稿をまとめた。その記事については前にコラムで書いている。
「アニメ様365日」小黒祐一郎[旧・WEBアニメスタイル]
第286回 原恵一の『ドラえもん』
http://style.fm/as/05_column/365/365_286.shtml
イベントの話に戻ると、やはり2時間で30年分を語り切る事はできず、大幅に時間を超過。それでもなんとか、現在の「アニメスタイル」の話題までたどり着いた。年表を作って来場したお客さんに渡しておいたので、安心して途中の話を飛ばす事ができた。
勿論、今回話す事ができなかった話題も多い。アニメージュとNewtypeでライターの仕事がまるで違っており、Newtypeの仕事を始めた頃に面食らった話などは、アニメ雑誌好きには興味深いのではないかと思う。僕は1990年代に、色々な雑誌や書籍のレイアウトを参考にして自分の仕事に活かしていた。「この雑誌のレイアウトを参考にして、この書籍を作った」と、サンプルを見せつつ話すのも面白いだろう。それらの話題はまた改めて、別の機会に。
(2016/05/06)
■小黒がかつて作った本の一部(Amazonリンク)