COLUMN

『タイガーマスク』を語る
第2回 第1クール~第4クール

 『タイガーマスク』は1969年10月から1971年9月まで放映された。全105話の長大なシリーズだ。
 本作はアニメオリジナルのエピソードが非常に多い。序盤は原作に沿ったエピソードをメインとし、間にオリジナルのエピソードを挟むかたちであったが、やがて、オリジナルが中心となり、第6クールでは1本も原作が使われていない。そうなったのは原作のストックが少なく、あっという間にアニメが原作に追いついたためだ。アニメの制作スタッフは、原作のストックが無い状況で長期のシリーズを展開するためにオリジナルキャラクターを生み出し、半年後、1年後を見越して物語を構成している。
 クール毎の節目の話数(13の倍数の話数)にクライマックスがくるように構成されている点にも注目してほしい。『タイガーマスク』は何度も放映が延長されており、どこで放映が終わるか分からなかった。そのために1クール毎に(つまり、13話毎に)物語を構成し、各クールの最後が最終回になってもいいようにしていたのだ。

 以下で『タイガーマスク』の物語の流れをクール単位で解説する。


第1・2クール(第1話~第26話)
 第1・2クールは原作を主軸として、アニメのオリジナルエピソード、オリジナルの描写を加えるかたちで展開する。
 第1話のタイガーの帰国から第7話でブラック・パイソンを倒すまでは多少のアレンジはあるが、基本的に原作に沿った展開だ。第6話でタイガーとブラック・パイソンの試合を見るために健太がちびっこハウスを抜け出す。それを追ってリングサイドに姿を現したルリ子は、試合中のタイガーに対して、悪役に憧れる健太を正しい道に導いてほしいと訴える。ルリ子の懇願を受け入れて、タイガーは第7話で反則を使わずにブラック・パイソンに勝利する。これをきっかけにして、彼はフェアプレーの正統派レスラーに転向する。タイガーは虎の穴の裏切り者になった上に、得意の反則を使わないという枷を自分に与えることになったのだ。
 オリジナルエピソードの第8話を挟んで、ゴリラマンが登場する第9話と第10話も原作を使用した話。第11話から第22話が「ワールド大リーグ戦」(ただし、途中で「ワールド大リーグ戦」でない試合が挿入される)で、この時期はオリジナルエピソードが多い。
 第23話から第26話までが第1・2クールのクライマックスとなる「覆面ワールドリーグ戦」であり、ここは原作に沿った内容(ただし、原作で「覆面ワールドリーグ戦」の試合として行われたスカルスター戦が前倒しになり、第13話で単独の試合として描かれている)。「覆面ワールドリーグ戦」にはミスター・ノー、ゴールデンマスク、ザ・ライオンマンといった個性が際立った覆面レスラーが登場。それ以外にも、ジャイアント馬場が覆面レスラーのザ・グレート・ゼブラとして参戦する等、「覆面ワールドリーグ戦」は見どころが多い。
 第1・2クールにおける、アニメのオリジナルエピソードを紹介しよう。直人が恵まれない人達と関わるエピソードが第12話、第19話、第22話だ。第12話では大阪の孤児院の子供達のために傷ついた身体で試合に挑み、第19話では母親の面倒を見るために廃品回収の仕事をしている少年とその周囲の人々と触れ合い、第22話では祖父を捨てて東京に行こうとする漁師町の若者に希望を与える。
 同じくオリジナルで「虎の穴が差し向けた殺し屋が、リングの外で直人を狙うエピソード」が第8話、第15話、第20話。その中の第8話は奇抜な展開が多い異色編だ。刑事ドラマ風の第17話では、ひき逃げ犯人を探し出すために直人と健太が活躍する(脚本は後にミステリ作家となる辻真先だ)。
 オリジナルキャラクターで、後にサブレギュラーとなる嵐老人が初めて登場するのが第11話。同様に重要な存在となるオリジナルキャラの大門大吾の初登場が第14話。原作にもいるキャラクターだが、第14話では虎の穴の3人の支配者も登場。大門大吾とタイガーが試合をするのが第18話だ(大門はこの話数で第72話以降と同じ不動明王のマスクを付けてリングに上がっているが、ミスター不動の名前は使っていない)。

第3クール(第27話~第39話)
 第27話は「覆面ワールドリーグ戦」の後日談だ。第28話、第29話、第30話がアニメオリジナルで、第31話、第32話、第33話は原作に戻って、アポロン兄弟との対戦と必殺技ウルトラ・タイガー・ドロップの完成を描く。第34話と第35話はアニメオリジナルで、第36話から第39話は原作に戻り、インドを舞台に「全アジアプロレス王座決定戦」を描く。第39話がタイガーとミスター?(クエスチョン)の対決で、これが第3クールのクライマックスとなる。
 後にイエローデビルとなる高岡拳太郎の初登場が第28話で、彼にスポットが当たるのが第34話。拳太郎はミスターXに騙され、母親がタイガーのために死んだと思い込む(タイガーとイエローデビルの戦いが描かれるのは、10ヶ月後に放映される第73話である。『タイガーマスク』のシリーズ構成のスケールは凄まじいほどに大きい)。
 第3クールには実在のレスラーの半生を描いたドキュメンタリータッチのエピソードが二本ある。第30話「不滅の闘魂『力道山物語』」、第35話「チャンピオンへの道 -G・馬場の苦闘-」である。

第4クール(第40話~第52話)
 第40話から第43話はインドから凱旋したタイガーが強敵・赤き死の仮面と戦うまで。オリジナルエピソードを挟んでいるが、この部分は原作の映像化だ。赤き死の仮面との死闘で反則を使ってしまったタイガーは、原作でもアニメでも再び海外に旅立つ。原作ではパリの地下プロレスでミスター・カミカゼやマップマンと戦うのだが、アニメでは第44話においてロサンゼルスでミスター・カミカゼと出会い、第45話ではドイツのハンブルグ、第46話ではモナコ、第47話でフランスのパリと、ヨーロッパを転戦。そして、第49話でロサンゼルスに戻ってミスター・カミカゼと対戦する。原作でもアニメでもミスター・カミカゼとの対戦で第2の必殺技ウルトラ・タイガー・ブリーカー(原作では技の名称がフジヤマ・タイガー・ブリーカーである)を完成させることになる。ミスター・カミカゼと対決に至るこの部分は地下プロレス界を舞台にした暗い雰囲気の原作と、各国で現地の人々と交流していくアニメのギャップが激しい。
 帰国後第一戦の第49話は原作をアレンジしたエピソード。第50話、第51話、第52話はオリジナルだ。第49話から第52話では「第13回ワールドリーグ」の模様が描かれており、タイガーは第52話で第4クールの掉尾をワールドリーグ優勝で飾る。
 第50話が被爆者家族が登場する「此の子等へも愛を」だ。このエピソードから「直人と市井の人々とのドラマ」を描いたアニメオリジナルの傑作エピソードが続出することになる。

●『タイガーマスク』を語る 第3回 第5クール~第8クール に続く

[関連リンク]
Amazon prime video(アニメタイムチャンネル) 『タイガーマスク』
https://amzn.to/4bjzNEM

タイガーマスク DVD‐COLLECTION VOL.1
https://amzn.to/4biO18J

原作「タイガーマスク」(Kindle)
https://amzn.to/3w3BJlV