COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
416 アニメ様日記 2023年5月14日(日)

2023年5月14日(日)
10時から新文芸坐で「雪の断章 ―情熱―」(1985/100分/35mm)を観る。前日の「翔んだカップル オリジナル版」と同じく、ブログラム「二十三回忌 哀惜・相米慎二」の1本だ。前にもざっと目を通したことがあるのだが、スクリーンで観るのはこれが初めて。とんでもない映画だった。デスクワークを挟んで、15時から「やきとん えん家 池袋東口駅前地下店」で吉松さん、ワイフと呑む。

「雪の断章 ―情熱―」の感想は改めて後日に書く。今日は以下のポイントだけを記しておく。

『おおかみこどもの雨と雪』で、廊下をPANして部屋の中の描写を変えることで時間の経過を表現しているのは「雪の断章 ―情熱―」の影響ではないか、という指摘をネットで見たことがあるけれど、「雪の断章 ―情熱―」からの細田作品への影響でもっと分かりやすいのは『時をかける少女』の男女3人のキャッチボールだと思う。『時をかける少女』の功介、千昭、真琴のキャッチボールは「雪の断章 ―情熱―」終盤の雄一(榎木孝明)、大介(世良公則)、伊織(斉藤由貴)のキャッチボールを下敷きにしているのではないか。男性2人と女性1人のキャッチボールというのが同じだし、3人の関係をキャッチボールで示しているのも同様。「雪の断章 ―情熱―」では長回しのロングショット(1シーン1カット)で、それに対して『時をかける少女』は小気味よいカット割りでキャッチボールを見せているのが対照的で、それも面白い。

2023年5月15日(月)
散歩以外はデスクワーク。珍しく、予定よりも作業が進んだ日だった。
本当に今さらだけど、『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』のタイトルロゴを確認。公式サイトやTwitter公式アカウントのタイトル表記は『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』で、それに倣っていたんだけど、タイトルロゴを見たら『Do It Yourself!! どぅー・いっと・ゆあせるふ!!』だ。「-」がつかないうえに最後にもう一度「!!」がついている。なんてこった(後日追記。「アニメスタイル017」では公式に合わせて『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』表記でいくことになった)。

2023年5月16日(火)
午前1時57分に出社。朝の散歩までにかなり作業が進む。やっぱり1時間早いと違うなあ。
設定資料を掲載するにあたってキャラクターを切り抜きにしたため、無くなってしまったキャラクターの周辺の手書き文字の内容について、作品の窓口さんから「(これはメイキングとして重要な情報なので)キャプションでその情報を入れてもらえないでしょうか」という連絡があり、資料とページ構成を読み込んでいることと、作品を大事にしていることに感心した。こういう担当さんが大勢いるといいなあ。
「Gメン’75」の録画をながら観。144話「雪原に消えた13人の乗客」(脚本/池田雄一、監督/山口和彦)ではバスジャックに乗っ取られたバスが雪崩に巻き込まれてしまう。バスは雪に埋まってしまい、乗客達は外に出ることができない。やがて乗客の酸素が足りないことが分かり、乗客の1人である弁護士が、乗客の人数が半分になれば生きのびることができる時間が倍になるという理由で、刑法37条を持ち出した上で、バスジャックが持っていた銃で他の乗客を殺そうとする。これは「カルネアデスの船板」だ。それ以外にも話が詰まっていて「カルネアデスの船板」の話になるのがエピソードの終盤なので、その部分を突き詰めてはいないのだけれど、ええっ、そんな展開になるの? という驚きを含めて面白かった。念の為に書いておくと、バスが雪崩に巻き込まれるところはミニチュア(バスの玩具かもしれないけど)を使った特撮だった。エピソードの作りとしては、先週再放映をしたばかりの142話「エレベーター密室殺人事件」に近い。こちらも脚本/池田雄一、監督/山口和彦。ネットで検索すると、刑法37条をモチーフにした話は前にもあったようだ。84話「三本指の刑事」だ。こちらも脚本は池田雄一。

2023年5月17日(水)
久しぶりに『プロメア』を視聴。『サイバーパンク: エッジランナーズ』を見慣れると『プロメア』は実にアニメらしいアニメだなあ。それはそれとして『プロメア』から『サイバーパンク: エッジランナーズ』、『リトルウィッチアカデミア』から『BNA ビー・エヌ・エー』の流れがあって、それと別に『グリッドマン ユニバース』があるのが、とてもいいと思う。トリガーの可能性が広がった感じ。
朝の散歩では「アルジュナ into the another world」「アルジュナ 2 オンナの港」「CMようこ」を聴いた。
WOWOWでやっていた「流浪の月」をチラ観したら、なかなかよかった。たまたま録画もしていたので、頭から最後まで再生。流し観してしまったけど、これは映画館で観てもよかったかも。
サンプルで頂いた「湘南爆走族 COMPLETE DVD BOOK vol.1」を視聴。やっぱり『湘南爆走族』は面白い。画質もDVDとしてはかなりよい。ディスク1枚で4話も観られるのも嬉しい。ブックレットには設定資料が載っていて、特に原作者の吉田聡さんがアニメ用に描いたキャラ設定(厳密にはキャラ原案になるはず)がよかった。資料の載せ方もいい。満足度の高い商品だった。

2023年5月18日(木)
東映チャンネルで斉藤由貴さんの「スケバン刑事」の番組CMをやっていたけど、「雪の断章」を観た後だと「スケバン刑事」ってメチャクチャな番組だね。
映像特典観たさに「雪の断章 ―情熱―」のBlu-rayソフトを購入してしまった。当時発売された「A MAKING OF 雪の断章-情熱-」は途中で謎のイメージビデオ(斉藤由貴さんがビデオ合成で世界を旅する)が入っていてびっくり。映像特典の見どころは斉藤由貴さんと、この作品で助監督だった榎戸耕二さんの対談だ。例の「18シーンを14分間の長回しで撮った1カット」をやったのは斉藤由貴さんのためだったとか、その1カットの次があの妙なカットだったのも理由があったとか。一時期までの相米慎二作品の「歪さ」についての話も納得できた。レンタルDVDで「翔んだカップル」「ションベン・ライダー」の映像特典も観た。どちらも映像特典は特集上映でのトークショーだ。
朝の散歩では「劇場版 エースをねらえ! 総音楽集」を聴く。ディスク1は散歩中に聴くのは向いていないかも。アルバムとしては貴重だけど。

2023年5月19日(金)
この数日の仕事のピークだった日。食事と散歩以外はずっとデスクワーク。一度はマンションに戻って横になろうかと思っていたけれど、そのタイミングがつかめなかった。午前0時に帰宅。普段の3日分くらいの作業をした。主には「アニメスタイル017」の作業だった。
朝の散歩では「聖闘士星矢 音楽集」と「テレビオリジナルBGMコレクション マジンガーZ」を聴いた。
Netflixの『ヤキトリ』の1話から3話を観る。キャラクターのデザインとアニメーションが悪くない。美術がいい。ロングショットの使い方が上手い。
WOWOWで10時15分から19時まで、劇場版『Gのレコンギスタ』の一挙放映をやっていて、事務所にいる間、ずっと流しっぱなしにしていた。元々、話の密度が高いので、延々と流していると、ちょっと不思議な感じになる。TVアニメの一気観とも違う感じ。ハイビジョンの劇場版『Gのレコンギスタ』を大きな4Kモニターで流すと、アナログっぽい感じをねらった撮影のために面白い画になっていると感じた。「セルアニメなのにデジタルっぼい」というか「フィルム作品のリマスターの理想的なかたち」というか。だけど、セルの透過性の高さについては「やっぱりデジタルなんだなあ」と思ったり。

2023年5月20日(土)
新文芸坐の12時15分からの回で「魚影の群れ」(1983/140分/35mm)を観る。プログラム「二十三回忌 哀惜・相米慎二」の1本。こちらの感想も後日に改めて。居酒屋で軽く呑んでから西口のTSUTAYAに。『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』と『らんま1/2』のDVDをレンタルする。事務所に戻って『雲黒斎の野望』を確認。配信やBlu-rayとはバージョンが違っていた。キーボードを叩いてからマンションで仮眠。20時半くらいに新文芸坐に行く。上映プログラム「【新文芸坐×アニメスタイル vol. 159】熱烈再見!クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望」を開催。トークのゲストは本郷みつる監督と原恵一さん。トークは充実したものとなった。トークの後、本郷さんの同人誌の販売。原さんと久しぶりに世間話をした。

以下は『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』のトークで語られたこと等。

完成した映画は物語の大半が時代劇パートであり、最後にオマケのように現代の冒険がくっついているけれど、プラン段階ではそうではなかった。原さんにアフレコ台本を見せてもらったのだけど、Aパートが序盤(野原一家が冒険に出かけるまでだったはず)、Bパートが「時代劇編」、CパートとDパートが「現代編」だった。仕上がった映画でもそうなっているけど、アフレコ台本のページ数は70%くらいがBパートの「時代劇編」だった。Cパートはとても短い。あっという間に終わる。これには驚いた。ちなみに絵コンテの割り振りはA、C、Dパートが本郷監督。Bパートが原さん。ただし、Bパートでもヒエール・ジョコマンが登場している辺りは本郷さんが描いている。湯浅さんはデザインと作画だけで、今回は絵コンテは描いていない(ロボットバトルは本郷監督が湯浅さんの作画を意識して絵コンテを描いている)。
プロット段階では「現代編」がもっとたっぷりしていた。最初は時代劇をやることについてあまり興味がなかった原さんが、色々と調べながら絵コンテを描いているうちにノリにノって、どんどん内容が膨らんでしまい、Bパートがあれほどの分量になってしまった。絵コンテは本郷監督と原さんが同時進行で進めており、本郷さんが調整してCパート、Dパートを短くした。変わった構成になってしまったが、本郷監督は「これはこれでいいと思う。二度と作れない映画となった」と語っている。
もうひとつ、今回のトークで明らかになったのは「時代劇編」のエピローグについて。歴史が元の時間軸に戻って、吹雪丸が母に「なにやら、長き夢を見ていたような心持ちがいたします」と語るシーンは、絵コンテでは「現代編」に挿入されていた。アフレコ台本でも同様だ。制作が進む中で、本郷監督の判断で位置を変えたのだそうだ。確かに感情の流れとしても、映画のまとまりとしてもこのほうがいい。
さて、以下が重要なポイント。未来からやっていたタイムパトロールのリング・スノーストームの名前は吹雪丸を文字ったものだ(リング=丸、スノーストーム=吹雪)。吹雪丸とリング・スノーストームは外見も似ていて、吹雪丸はリング・スノーストームに対して「他人とは思えぬ」と言っており、リング・スノーストームはそれに対して、含みのある感じで「ええ」と頷いている。トークで本郷監督にうかがったところ、リング・スノーストームは吹雪丸の子孫で間違いないそうだ。リング・スノーストームがシロの姿でなく、彼女自身の姿で野原一家と活躍するのが、圧縮された「現代編」だ。もしも、Cパート、Dパートのボリュームがもっとあったら、吹雪丸とリング・スノーストームの関係が掘り下げられたのかと本郷監督に訊いたところ、「その可能性はある」とのこと。

以下は僕がまとめた『雲黒斎の野望』のバージョンの推移。変化しているのはパラレルワールドでのサブリミナル効果の有り無し。公開当時のバージョンでは日本の支配者になったヒエール・ジョコマンの顔が、ニュース番組中でチラチラと挿入される。サリン事件の後で、アニメの1コマの遊びが問題になった頃だった。

(1)劇場公開(オリジナルのフィルム)
これがオリジナル。サブリミナル効果あり。

(2)TV放映
ここで初めて修正が入って、サブリミナル効果が無くなった。

(3)
ビデオソフト、LD
修正が入ったバージョン。

(4)DVD
修正が入ったバージョン。

(4)ネット配信
修正なし。サブリミナル効果あり(ただし、ネット配信の初期はDVDと同じマスターが使われていたかもしれない)。

(5)Blu-rayソフト
修正なし。サブリミナル効果あり。