COLUMN

第812回 『いせれべ』の話(4)~総監督

 『いせれべ』は監督・田辺慎吾、総監督・板垣のダブル監督体制です。役割分担の内容はと言うと、脚本(シナリオ)の主導は板垣。その後、コンテ発注は板垣・田辺間の打ち合わせで細かい流れを伝えた後、コンテ・演出・作画・美術に対しての打ち合わせは全て田辺監督。で、コンテの修正は田辺コンテも含め全話板垣。このやり方を決めたのはもちろん、俺です。自分の持論が「監督の仕事の半分は“発注”である」だからです。特に田辺君の場合、俺のようにアニメーター出身じゃないので、なおのこと「発注がほぼ全てだ」と教えていました。
 で、ここからが問題で、頭の話数から徐々に上がってくるラッシュ(撮影済フィルム)を見ると、お世辞にも良い上りとは言えず「これじゃ納品出来ない(汗)」と。そりゃ無理のない話で、まだ画作り的に見ても未熟なスタッフをアニメーターじゃない監督が制御しきれる訳がありませんから。
 ということで、納品前に慌てて作り方変更! 田辺監督と他のスタッフは先話数を進めて(作り続けて)、板垣と木村(博美)は1話から順次レイアウトから原画・作監修正。話数によってはほぼ作り直し。
 例えば、1話で柵の中から絶槍でゴブリンを突くところは板垣の描き直し原画。同話数の調理・食事シーンは板垣の指示に合わせて木村全修正。変身した優夜の翌朝登校カットの縦PAN↑はレイアウトが板垣、原画・木村で全修。2話の森の中・アクション原画とBG(背景)はほぼ板垣の描き直し。クレープ屋の芝居・キャラ修全て木村。とにかく1話・2話は木村キャラ総作監も板垣アクション原画&BG(背景)修正も全体かなりの割合を占めたと思います。
 つまり、毎週毎週修正しまくっての納品だったのです。それ故、総作監や原画、さらには背景にまで俺の名前がクレジットされてる訳です。ご納得頂けましたでしょうか?

 そんな訳で、正直今回は“総監督”と名乗るには——変な言い方になりますが、仕事をし過ぎました(汗)。

 続きはまた次週。