COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
381 アニメ様日記 2022年9月11日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2022年9月11日(日)
新文芸坐で「ウエスト・サイド・ストーリー」(2021・米/157分/DCP)を鑑賞する。この映画はロードショー時にIMAXで観たかったのだけど、その時は時間がとれなかった。なお、1961年の「ウエスト・サイド物語」は1980年代にレンタルビデオで視聴しているけれど、その記憶は薄くなっている。中盤までは本当によかった。カメラワークもセットも役者も音楽もいい。特にポスターにもなっているベランダのシーンの臨場感が素晴らしかった。決闘前の登場人物が全て参加してのミュージカルシーンもよかった。新文芸坐の音響もよい。ただ、映画終盤に物語が深刻になってからは「映画が小さくなった」印象。これは僕が映像とかセットのスケールなどを楽しんでいたからそう思うのであって、登場人物がどうなるのかを気にして観ているなら、あまり問題にならないのかもしれない。エンディングもよかった。映画全体の印象としてはいまひとつだけど、もう一度、劇場で観たいくらいには気に入った。

2022年9月12日(月)
へえ、そんな映画があるんだ、だけど、観る機会があるかな、と思っていた「最後にして最初の人類」がAmazon prime videoの見放題に入っていた。こんなマニアックな映画をパソコンで気軽に観ることができるのは贅沢だなあ。ただし、この作品は劇場で観ていたら随分と印象が違っていたに違いない。
SNSで2002年に開催した「マッドハウス・アニメスタイル合同イベント 出崎統NIGHT2」が話題になった。そのイベントでは『家なき子』の名場面を抜粋でビデオ上映をした。TMSに許可をもらった上映で、編集は僕がやった。上映が終わったところで、小林七郎さんが涙ぐんでしまって、出崎さんも言葉が少なくなってしまった。そして、イベントが終わった後、出崎さんがすまなさそうに「あの時、涙が出そうになって話ができなくなったんだ」とおっしゃった。配信がある企画だと、ああいった空気感のイベントは難しいかもしれない。

2022年9月13日(火)
吉祥寺の肉山で業界の方達と食事。去年から約束していたのが、ようやく実現できた。午前中は『ツルネ ―風舞高校弓道部―』を1話から6話くらいまで流し観。夕方は『サイバーパンク: エッジランナーズ』1話、2話を観る。

2022年9月14日(水)
『サイバーパンク: エッジランナーズ』を最終話まで観る。NetflixとAmazon prime videoで色々と観て、画質を確認する。

2022年9月15日(木)
いつでも観られると思った『Fate/Grand Order 絶対魔獣戦線バビロニア』のNetflixの配信が終了する模様。他の配信サイトはどうなるんだろうか。近年の有名タイトルはずっと配信で観られるものだろうと思っていたが、そういうわけでもないのか(追記。2023年2月現在で、同作はAmazon prime videoやU-NEXTでは配信が続いている)。
原作「うる星やつら」の再読を始める。個々の話というか、個々のコマとかセリフとかは覚えているんだけど、エピソードの順番などは覚えていなくて「あれ、弁天の登場ってこんなに早かったっけ」と思ったり。今見ると、押井さんがあたるの母親に興味をもったのが分かるような気がする。

2022年9月16日(金)
グランドシネマサンシャインの午前8時10分からの回で『雨を告げる漂流団地』を鑑賞。作り手の、というか、石田祐康監督の登場人物への想いはかなりのもので、その想いを作品にぶつけられるところに彼の価値があると思う。1本の映画としてはまとまりがよくないと思うが、それと監督の想い入れは表裏一体なのだろう。
Zoom打ち合わせの後で有楽町マルイの「機動警察パトレイバー 30周年突破記念[TV-劇パト2]展」に。目当ては『機動警察パトレイバーEZY』パイロット映像だった。具体的なことは書かないけれど、興味深いものだった。有楽町マルイの同フロアでは「おそ松くん 60周年 おそ松さん 6周年 記念展」も開催していて、マンガ原稿、アニメの設定資料等が展示されてた。こちらは入場無料だったけれど、なかなか充実した展示。「おそ松くん」と『おそ松さん』のコラボ商品がよかった。同フロアでは『夏へのトンネル、さよならの出口』のPOPUP SHOPもあり。こちらも絵コンテ等の資料が展示されていた。凄いぞ、有楽町マルイ。

2022年9月17日(土)
某所から問い合わせがあって、事務所内で「アニメビジョン」のバックナンバーを探すが、目当ての号は見つからず。ちなみに「アニメビジョン」とはVHDのビデオマガジンで、僕は学生時代に編集スタッフとして参加していた(後日追記。SNSで「アニメビジョン」のバックナンバーをお持ちの方がいて、問い合わせをくれた方にお伝えした)。
新文芸坐で「高校大パニック」(1978/94分/35mm)を鑑賞。プログラム「反逆のメロディー 澤田幸弘傑作選」の1本だ。「数学できんが、なんで悪いとや!」のキャッチフレーズは当時からよく耳にしていたので、予告くらいは観ていたはず。タイトルとキャッチフレーズから、大勢の学生が教師相手に大暴れする話だと思っていたのだけれど、かなり違った。昔の映画なのでネタバレを気にしないで書くが、前半で主人公の男子生徒が盗んだライフルで教師を教室で撃ち殺し、その時に同級生の女子生徒も撃ってしまう。その後も先生や警察に対して撃ちまくるし、ヒロイン格の女子生徒が警察側の誤射で死んだりするけど、センセーショナルなのは、やはり前半の教師を撃ち殺すところで、その場面の「やっちゃった感」が凄い。90分ほどの映画だけど、プロットがシンプルなので体感としてはちょっと長い。途中で緊張感が維持できなくなっている感じはあるのだけど、そこまでは確実に面白い。最後に警察に捕まったところで、これだけの事件を起こしたのに主人公が来年の受験や、受験勉強のためのラジオ講座のことをしきりに気にしているというのが皮肉なオチとなるのだが、そこまでの展開での主人公の描写からするとしっくりこない。ラストは元になった8ミリ映画と同じなのだろうか。映画後半で校舎から脱出した男子生徒達が、教師が殺されたことではなく、彼が死んだことで自分達の受験勉強が遅れることを心配するのも、当時としては痛烈な描写だったのだろう。