COLUMN

第754回 また短いけど……

「自分の画力はまだまだ」と自覚のある人は、
日々描いてさえいれば必ず今より上達します!

 それとは逆に、

「自分は大したものだ」と現時点で思っている人は、
それ以上巧くなりません!

 これ、自分が10年若手の育成をしてきて実感したことの内のひとつです。

というのも最近また、アニメーターとして入社希望の女性と面接しました。履歴書を見ると特に問題なさそう(というかハッキリ言うと高学歴さん!)で、志望動機を読んでも真面目そうな方でした。ひとしきり会社の説明をした後、もう一度彼女のポートフォリオを捲りつつ「何か訊きたいことありますか? アニメ業界四方山でもいいですよ?」と尋ねたところ、美術系学校卒でもなく、小・中・高と美術の成績は“普通(本人談)”である彼女から出た質問が以下。

「動画のトレスはどのくらいで慣れますか?」
「デッサンの勉強する時、どんな被写体を描いたらよいでしょうか?」
「レイアウトを勉強するにはどの辺から始めるべきでしょうか?」
「そもそも私、アニメーターになれるでしょうか?」など

 「本当に真面目だなぁ~」と思い、そのままの感想を御本人に伝え、更に問答を続けました。

正直、自分も高等な美術教育を受けていないので偉そうなことは言えないし、何の権威もヒット作もない俺の言うことにどこまで説得力があるのか分からないけど思ったこと言います。個人的には現状の画を見る限りでは「普通」です。でも、可能性は十分あると思います。だって「0(ゼロ)からでも勉強してアニメーターをやりたい」と思ったから来たんでしょ? こんな一流大学を受験して合格するってことはよっぽど勉強したはずだし、その成功体験があるなら、対象が大学からアニメに替わっても、ある程度の努力は続けられると思いますよ。まず、そもそも自身の画力が「まだまだ」なのは自覚あるでしょ?

と訊くと、彼女は何度も頷きました。で、冒頭の話が出たわけです。

「自分の画力はまだまだ」と自覚のある人は、日々描いてさえいれば必ず今より上達します! 逆に、「自分は大したものだ」と現時点で思っている人は、それ以上巧くなりません! 日々修練を積めばデッサンだパースだは後から付いてきます!

 本っっっ当に“ド”月並みだけどこれに集約されます、どんな技術職も芸事も。

テレコム時代、先輩方の指導を何の抵抗もなく受け入れられて上達できたのは、「大したことない、まだまだな板垣」を自覚してたから——なのです!