COLUMN

第753回 アニメ会社と監督

 だいぶ以前に聞いた話、

テレコム(・アニメーションフィルム)の頃、板垣はいつも会社にいたイメージがある!

と、テレコムOBの某色彩スタッフさんが言ってたそうです(ミルパンセ社長・白石談)。
 それ聞いた時、確かにそんな感じだったかも~と我ながら思いました。友人らと遊びに行ったりする日以外は、休みの日も出勤してましたから。そりゃあ1994〜2000年頃の話、「働き方改革」な今とは「時代」が違います。俺が己の手の遅い分を巻き返そうと頑張ってた時期の話で、そのテレコムOBの色彩スタッフさんはその頃テレコムで一緒だったという訳。
 ま、月々のノルマ云々を差し引いても、好きで会社(スタジオ)に長くいたには違いありません。単純な話、

今も昔も、何かモノを作る現場にいること自体が心地良い性分なのです、板垣は!

 会社(スタジオ)の大小に関わらず、何がしか生産性のある場所で働いて、その生産に貢献することに生き甲斐を感じています。それは勿論、自分が監督であることに限っての話ではありません。動画だった時も、誰もやりたがらない大変な大作カットを自ら進んで取りにいって、望んで休日出勤してたくらいですから。
 新入社員の頃から、そういう年齢・学歴・勤続年数に関係のない、徹底的な成果主義がアニメ会社にはあると天然で感じていました。「大変な苦労の後にはご褒美がある」と。褒美が報酬か役職かは決まっていませんが、間違いなくあります。たとえそれらの褒美が物理的になかったとしても、確実に「技術」は身に付きます。

「技術」こそは決して裏切らない、最大の報酬でしょう!

 逆に本来、真面目に取り組んでいれば手にできるはずの「技術」を身に付けもせず、学歴と世渡りだけでありつけた地位・役職を何十年も守り続ける方が全然リアリティがないと個人的には思ったし、積み重ねた努力が絶対無駄にならない場所——それがアニメ会社(スタジオ)なのです。
 だから、ここでも何度も独白(?)したとおり、やはり

30代であちこちの会社で雇われ監督としてお世話になって渡り歩き、40代以降は自力で育成したスタッフと一緒に作品を作り、監督をやる!

つもりです。既にでき上がっている大手アニメ会社の監督の場は、今の30代の若手に譲った方が業界的に循環するというもの。これからの時代、我々賞味期限切れのアラフィフ監督は他所様の会社(スタジオ)に降臨し、そこをかき乱して作品作りするより、少し遠回りになろうとも自らのホームグラウンド足り得る会社(スタジオ)作りに取り組んだ方が、業界的に健全かと思ってます。だって今や、脚本・コンテから作画・美術・仕上げ、そして撮影・編集までPCだけで出来てしまう時代なのに、

なぜいつまでも“セル時代の分業スタイル”に拘るのか?

と。なんなら「技術」さえあれば数人でも会社は作れるし、アニメも作れるという基本に立ち返るべきなではないでしょうか?

 あ、もちろん大手で絶対的な位置が確保できている実力派人気監督は、それでいいと思いますよ! そこに難癖付ける資格は自分、ないですから。