COLUMN

第732回 『巨人』と『ばら』と長浜アニメ

「ぴあ」から出ているDVD-BOOKシリーズ、『巨人の星』と『ベルサイユのばら』毎月買ってます!

 俺的にはこの“ぴあシリーズ”、『あしたのジョー』から始まり『宝島』『ガンバの冒険』『スペースコブラ』『エースをねらえ!』『家なき子』で一旦休止(終了?)になった出﨑統監督作品シリーズの流れで買い始めた『巨人の星』、そして『ベルサイユのばら』! これらは偶然なのか? 狙いなのか? 両作とも長浜忠夫監督作品。厳密にいうと『巨人の星』は第1~85話までは役職クレジットが“構成”(まあやってる仕事内容は後半同様“演出”のはずですが)、あとこれは今更語るまでもないことかとも思うのですが『ベルばら』の方は第13話で降板(第19話以降は出﨑統監督作品)です。
 順番に説明すると、『巨人の星』は何せ1968年放送開始のアニメ、1974年生まれの自分がリアルタイムで楽しんでいたはずがなく、もちろん再放送でした。確か名古屋で朝7時30分~とか学校行く準備してる時間帯にアニメの再放送枠があり、それで観ていた気がします。特に野球に全然興味がなかった俺にとっては、着替えたり飯食ったり登校準備の方がよほど重要で、内容は殆ど憶えていません(スミマセン)。ただ、何故か「大人って、魔球やら特訓やら色々あって大変なんだな〜」という空気を感じていたように思います。
 そして、『ベルばら』に関しては自分が出﨑ファンになってからバックナンバーとして、当時ビクターが出していたビデオ全集(VHS)全10巻をビデオレンタルで借りて観て——なので、正直「出﨑監督作品以外のアニメに用がなかった」当時の自分は、確か5巻から見始めてて、前半の長浜監督話数はノーチェックでした(これまたスミマセン)。演出家(監督)の違いなんて興味まるでなしのウチの姉貴は、最初から全話じっくり楽しんでましたが。
 で、この機会に毎月買って全話追っかけて観直しているんですが、素直に

面白いじゃないかっ!!!

と。失礼ながら、我々小学校高学年になると『タッチ』とかがアニメになった世代だけに、『巨人の星』のオーバー・リアクションな長浜演出って、やっぱり恥ずかしかったです。ところが逆に今、大人になってから見返してみると、自在に変化する色使いや動物にメタモル! といった、一歩間違えると笑いになりそうな演出が、団塊ジュニアの俺らから見た当時の大人の怖さ・威圧感をよく表現していると思い、「わかる、わかる!」でした。同様のことが長浜版『ベルばら』にも言えて、美しく可憐な少女漫画の世界に激しく、そして“恥ずかしい!”劇的な演出のオンパレードで、今観ると、後半の出﨑『ベルばら』とは違った魅力に溢れています!

そう!“大人って恥ずかしいもの”なんだ! ただ、その“恥ずかしい”を真正面から受け入れて一所懸命生きるしかないのが、所詮「人生」ってもの! 過剰な演出を照れているようではまだまだ子供だ!

 いや、板垣は反省しました。出﨑監督が生前インタビューで「『巨人の星』は劇画じゃない」や「(前半の『ベルばら』は)捉え方が少女漫画的過ぎる」などの否定的な意見を、“崇拝している出﨑監督が仰るんだから”とよく観もせず鵜呑みにしていた、ということを! やっぱり、

自分が尊敬する巨匠が仰ることに対してでも、己の意見はちゃんと持ってその是非を判断する冷静な目を持つ!

ということが大切なのだと思いました。
 そして、来月発売分から出﨑統監督作品の『ベルばら』が始まります。