COLUMN

第731回 構成と脚本

 前回のお茶濁し原稿でも書いたとおり、現在シリーズ構成を書いており、その流れで脚本も少々(2~3本?)書く予定です。今回のシリーズはシリーズ構成・総監督。普段は自分、監督・コンテ・演出・作画をメインで仕事させて頂いてますが脚本もたまにやります。初脚本はガイナックスに入ってやった『この醜くも美しい世界』(2004年)の第7話の脚本で、もちろんコンテ・演出・作画監督(プラス一部原画)も自分でやり、現場では一人外注と呼ばれました。意外に思われるかもしれませんが監督デビューより先なんです、脚本デビューの方が。いや、単純にアニメーター出身は監督になってから、やや強引に「監督の僕が脚本も書きます」という場合がほとんどで、アニメーターから直で脚本デビューって周りがなかなかやらせたがらないんです。多分、プロデューサーや制作側からすると、「画描きに文章が書けるわけない」と思っているからなのではないでしょうか? いや、世間的にも、はたまた当のアニメーター本人までもがそう思っていることでしょう。
が、俺自身の数少ない脚本経験値から言わせて頂くと、

脚本って、小説(文学)とかより、画コンテに近い!

ていうのが実感です。はっきり言って自分は作詞や小説が書けると思っていませんし、書きたいと思った事もありません。『Wake Up,Girls! 新章』の監督をお受けする条件の一つに「作詞は出来ませんけど……」とつけたくらいです。自己顕示だ作家性の誇示だには興味皆無なので、自分ができないと分かっていることは、ハッキリ「できない」と言う主義で47年生きてきました。だから運転免許も取らないのです、事故るイメージしか頭に浮かばないから(関係ないか)。
 でも、画コンテを切って(描いて)みると「脚本はできそうだし書いてみたい」と思えたのです。『まほろまてぃっく~もっと美しいもの~』(2003年)の演出の後、「次はオリジナル」と聞いて「脚本書かせてください」と佐伯昭志監督に申し出たのでした。幸いガイナックス・山賀(博之)さんは「アニメーターでも書きたい人には書かせよう」という考え方のようで、すんなり毎週のホン読み(脚本打ち)に参加させて頂き、本当に楽しい仕事ができました。因みにこの『この醜~』7話が好きだと言うプロデューサーさんから名指しで振られた仕事が、『コップクラフト』(2019年)でした。10数年前の作品なのに。

やっぱり、各話の仕事はしっかりやっとくもんですね、こうやって後から実りますから!

あと、アニメーターや演出の方々、「書いてみたい」と思ったら、恥知らずに手を挙げることをお勧めします! 書いてクレジットにのったら「貴方はもう画も描ける(演出も出来る)脚本家」です! 話を広げて昨今のアニメ事情的に言っても、昔と違い大半の作業工程が皆同じパソコン(PC)というツールを使っての仕事になる訳だから、「原画しか描かない」とか「色しか塗らない」とか「コンポジット組むしかしない」などと決めてかからないで、副業までは言わなくても「1.5職」! 例えばアニメーターなら、次に当て込んでるシリーズの作画INまで時間が空いたら脚本1本入れる、とかです(はっきり、脚本の方が同じ時間で倍稼げます!)。制作さんも進行ができて脚本も書ければ、会社的にも「社員の手空き」を埋めるのに一役買うでしょう。メインの職以外に出来ることを増やしていけば収入も増えるし、社員・スタッフの人数ももっと減らせるはずなんです。そうすれば、もっと必要なところに人手が回せるでしょう。業界皆助け合い! 間違ってもデジタル化に応じず「原画しか描けない」を貫くスタッフのために“スキャン~タップ貼り”に何人も制作進行の人数と時間を費やすのはもうやめましょう! 特に職人さんの「○○しかできない」は分かるのですが(俺もそうだし)、もう半歩「○○も少しならできる」を身に着けてみては? と言いたいだけ。あくまで板垣の私見として(※一般の方々には専門的過ぎてすみません、今度改めて解説します)。

 ——さて、今回も短くて申し訳ないのですが、また構成作業(修正)に戻らせて頂きます(汗)。