COLUMN

アニメ様の『タイトル未定』
323 アニメ様日記 2021年8月1日(日)

編集長・小黒祐一郎の日記です。
2021年8月1日(日)
早朝に新文芸坐に。オールナイトの終幕を見届ける。事務所でイベントの予習をした後、新宿まで歩く。日陰を選んで歩いたけれど、やっぱり暑い。12時から「第178回アニメスタイルイベント  『映画大好きポンポさん』を語ろう!2」を開催。前回のイベントで触れることができなかったテーマに触れることができた。触れたかったのは以下のような内容だ。

(1)劇中でジーンが映画のために友人や生活を捨てたのと、劇中劇「MEISTER」でダルベールが音楽のために家族などを捨てたのがシンクロしている。ダルベールのアリアが、ジーンにとっての「MEISTER」。

(2)つまり、平尾隆之監督が作品を作るために、人生をある程度犠牲にしているのが(1)とシンクロ。乱暴にまとめると、平尾監督=ジーン=ダルベールという関係。

(3)劇中劇の「ダルベールの音楽活動」、劇中の「ジーンの映画作り」、現実における「平尾監督の作品作り」がメタ構造である。

(4)そして「何かを得るために、何かを捨てること」はクリエイターだけがやっていることではない。誰もが何らかのかたちでやっていることだ。だから、この映画のメタ構造は観客にとっても他人事ではないはず。

さらに付け加えると、映像を編集する(切る)ということで、人生の決断を描いているのだ。と考えることもできる。平尾監督に聞きたかったのは(2)の部分。つまり、平尾監督がそのメタ構造を意識していたのか、ということだ。
イベント終了後、新文芸坐で「嘘」(1963/99分)を観る。7月31日(土)の「足にさわった女」と同じく、プログラム「増村演出の神髄に迫る めくるめく増村保造の世界 PART2」の1本。3本構成のオムニバスで、増村保造演出の1本目はかなりパンチが効いている。ではあるけれど、不条理劇的な3本目(衣笠貞之助監督の作品)のインパクトが凄くて、そちらが印象に残った。現存する「嘘」のフィルムにはオープニングと1話目のサブタイトルが欠けているため、先にDVDでオープニングとサブタイトルを見せて、そこからフィルムに切り換えるという今の新文芸坐だから可能な、ウルトラテクニックによる上映だった。

2021年8月2日(月)
12月にコミケが開催されることが発表される。嬉しいけれど、中止になる可能性はあるわけで、そのことも考慮して、刊行スケジュールを立てなくてはいけない。

2021年8月3日(火)
TOHOシネマズ池袋の午前中の回で『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』 を観る。これは秀作だ。過剰なくらいに物語を作り込んでおり、その作り込みが面白さに直結している。笑えるだけでなく、感動できるポイントもあり。人物描写にもいいところがある。大筋としては推理物で『クレヨンしんちゃん』のリアリティレベルだからこそ成立するミスディレクションがあり、それも素晴らしい。

2021年8月4日(水)
『Fate / Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』を観る。さすがはPREMIUM THEATER。音がよかった。ある人に『ワンダーエッグ・プライオリティ』や『Sonny Boy』の画作りについて、色々と教えてもらう。Amazonのアニメージュのページを見たら、どの記事が電子版に載っていないかが表記されるようになっていた。

2021年8月5日(木)
早朝散歩は続けている。この日は池袋(豊島区)から王子(北区)まで行って、さらに隅田川、荒川の辺り(足立区)まで歩く。夏休み感のある散歩だった。

2021年8月6日(金)
池袋HUMAXシネマズで『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』を鑑賞。中村豊さんの担当以外もアクション作画が山盛り。16時半からBONESで打ち合わせ。

2021年8月7日(土)
押井守監督は今年の8月8日で70歳になる。それに合わせて、8月7日から8日にかけて、押井作品のオールナイトをやる予定だった。しかし、諸般の事情でこの日に開催することはできなかった。残念だ。せっかくなので、エア押井守映画祭として、1人で「立喰師列伝」を配信を観た。昼の散歩では『イノセンス』のサントラを聴いた。
14時から、NHK文化センターの配信「アニメプロデューサー丸山正雄が語る アニメ制作の歴史」を視聴。90分で現在の話まで到達するのかでハラハラしたけれど、奇跡のようにまとまった。16時半から新文芸坐で花俟さんと今後のオールナイトについて打ち合わせ。
『響け!ユーフォニアム』を1話から視聴。もしも、久美子達の前に滝先生が現れなくても、それはそれで楽しい物語になったのではないかと思ったり。楽しさと、ちょっとリアルな人間関係(葉月の他人との距離の取り方について久美子が馴染めないとか。あすかが面白お姉さんのようで、他人に心を開いてないとか)の両立も面白い。