小黒 その後、『カレイドスター』のOVAが2本ありますが、お話としてはTVで完結しているじゃないですか。
佐藤 うん。そうですね。
小黒 でも、描けるならもっと描きたいみたいな感じだったんですか。
佐藤 そうでしたね。TVシリーズ本編のほうに自分のカラーが出すぎているので、1本目はそうじゃないものが観たいなと思って、和田さんにまるっとやってもらったんだよね(編注:OVA『笑わない すごい お姫様』で和田高明は絵コンテ、演出を担当した上に、音地正行と共同で作画監督を担当。原画も描いた)。
小黒 ロゼッタの話ですもんね。
佐藤 そうです。ロゼッタの話を好きなようにやってもらおうかな、と思って。結構好きなようにやってくれて、それはそれで和田さんらしくて面白かった。2本目のほうは、池田東陽が成立させたんだと思うんだけど、「本編の映像をBANKで使いながらひとつの話を作れない?」という感じのスタートラインから始まったものだったかな。
小黒 『カレイドスター Legend of phoenix ~レイラ・ハミルトン物語~』(OVA・2005年)ですね。
佐藤 総集編的なものなんだけど、それでOVAになんないかな? みたいなとこからスタートしてるんですね。だから、過去映像を大分使っているんですけど、玲子さんに書いてもらっただけあって、思ったよりちゃんと新作になった。
小黒 完成した作品は回想部分もありますが、新作部分がメインになっていましたよね。
佐藤 そうそう。全体の尺はこれで新作部分はこのぐらいという条件で作る事になったんだと思うんですけど。どこで切り替わったのかは、あんまり詳しく覚えてないですね。
小黒 ここで話はいきなり30年くらい前に飛ぶんですけども、佐藤さんが「島本和彦さんの『仮面ボクサー』をアニメにしたい」と言ってた事があって。
佐藤 マジっすか!?
小黒 マジっすよ。
佐藤 記憶にないです(笑)。
小黒 時期的に言うと、『ビックリマン』か『悪魔くん』の頃だったのではないかと。
佐藤 ああ。
小黒 「あれをアニメにできないかと思うんだけど、編集部の担当さんは分からないかな」と言われたんですよ。僕が「アニメージュ」で仕事をしていて、「仮面ボクサー」の連載が、同じ徳間書店の「月刊少年キャプテン」だったんですよね。それで「仮面ボクサー」の担当さんの電話番号を教えた覚えがあります。
佐藤 当時は東映にいたから、やったとしたら東映の企画部に企画を持っていってるはずですね。
小黒 そうですね。作品のかたちにはならなかった。
佐藤 覚えてないや。企画書を一瞬見た記憶があった気がしたけど、それも気のせいかもしれないです。
小黒 でも、「仮面ボクサー」は好きだったわけですね?
佐藤 そうね。今、言われるまで忘れてましたけど(笑)。島本和彦さんの作品は好きなノリだったので。
小黒 『カレイドスター』の仮面スターは、全然、島本ノリじゃないんだけど、名前が「仮面ボクサー」っぽい(笑)。
佐藤 「仮面ボクサー」があったから仮面スターをやったわけではないと思うんですけど(笑)。仮面スターは、玲子さんのアイデアかなあ。
小黒 レイラさんにしては、ちょっとはっちゃけてますよね。
佐藤 そうですよね。もしかしたら「そろそろ仮面のキャラがほしい」みたいな事を言ったのは、池田だったかもしれないですね(笑)。「やっぱ仮面じゃないスか」みたいな事を。
小黒 あっ、タキシード仮面的な意味で?
佐藤 そうそう(笑)。
小黒 ほんとかなあ?(笑) だけど、池田さんならそのぐらいの事は言ってもおかしくないですね。
佐藤 (笑)。
小黒 その後は、池田さんとはどうだったんですか。
佐藤 『カレイド』の後、「やっぱりもっと一緒にやりたいね」って話はあったので、機会があればと思ってやってましたけど。ずっとベタでやってるわけではないので、折に触れ、ぐらいの感じで。
小黒 以下の話は、このインタビューで記事として活かす必要はないんですけど、池田さんが亡くなった時に、みんながあんまり驚かなかった。
佐藤 はいはい。
小黒 イベントでも「死んじゃったね、バーカ」みたいなノリだったと思うんですが、あれはどうしてだったんですか。
佐藤 いや、体調悪そうなのにガールズバーに行くし、ずっとバーボンかなんか持って歩いてる奴だったので(笑)。
小黒 なるほど。
佐藤 まあ、愛情込めて「バーカ」と言ってました。みんな、嫌いではない。「お前の事は大好きだったよ、馬鹿野郎」っていうやつですよ(笑)。
小黒 池田さんが亡くなる前のことですが、楽屋での世間話で印象的だった事があります。イベントが始まる前に、池田さんはどれだけ自分の体、生活がボロボロかという話をしていたんですよ。それを聞いて僕はかなり驚いて。イベントが始まってからも、僕はそのイベントに気持ちが入らない、みたいな事がありました。
佐藤 (笑)。体調悪そうなのは、見てても分かったので、「大丈夫かよ?」って言うんだけど、飲むのをやめないので、もうどうしようもなかった。
小黒 顔色悪かったですものね。
佐藤 うん。後になってみるとね、「ああ、これが原因かな」というものは色々と分かるんだよね。会社を興して、色んな人の責任を背負い込まざるをえなくなった事もあったので、そこは大きいんじゃないかなあ、とは勝手に思ってるけど。
小黒 なるほど。でも、愛すべき人物だったという事は、語り継いでいきたい感じではありますね。
佐藤 そうですね。今までにも何度か言ってるんだけど、池田東陽がいなかったら、僕もあそこまで『カレイドスター』に没頭しなかったと思うんですね(笑)。
小黒 ああ。
佐藤 普段なら、ちゃんと距離をとって作っただろうと思うんだけれども、「やんちゃな熱意にやっぱ応えていきたいな」という変なスイッチが入っちゃった事は確かです。
小黒 池田さんはエンカレッジフィルムズを立ち上げて、ほどなく亡くなられたんでしたっけ。
佐藤 『おんたま!』とか、作品をいくつかやってはいるので、作ってすぐではなかったですよね。『(絶滅危愚少女)Amazing Twins』(OVA・2014年)っていう作品をやり始めたぐらいの頃だったんだよね。
小黒 分かりました。池田さんの事は語り継いでいきましょう。池田さんは面白い人物でした。
佐藤 うん。