COLUMN

第714回 『蜘蛛ですが、なにか?』まとめて、続き

 放送開始直後にも話題にした「私」——蜘蛛子役の悠木碧さんは『ベン・トー』以来9年ぶり。『ベン・トー』の白粉花役の時にも「悠木さん、天才だね」との感想を収録時に言った憶えがある板垣。白粉の中身を自身でしっかり作り込んできてて、一言一言にもの凄く説得力があり、毎週の収録が楽しみでした。
 で、9年経って今度は主役でもっと凄くなっての再会! だって蜘蛛子のシーンはほとんど一人語り。それがテストの段階で1話分通しての抑揚、メリハリを悠木さんのほうで計算してすでに作り込んできているのが分かるんです。最初は自分も今泉(雄一)音響監督もあれこれ注文を出してみたのですが、何か悠木さんのほうでやりにくそうに見えて、途中からは画面作りの意図から外れていない限り、リテイクを控えるようにしました。例えば「ここはもっと声を張るイメージでコンテ切っていた」と俺のほうが思っても、そのまま芝居を通して聴いてると、後でもっと大声を出す箇所が出てきて、「あ、なるほど。こちらを立てるために前は抑えてたのか」と納得させられることが何回かあり、

この作品は悠木さんの作ってきた流れで駆け抜けてもらったほうが絶対面白くなる!

と思ったのでした。ある日の収録で自分が「なるべく一気に演ってもらうよう、(収録)止めないから」と言うと、悠木さんからは「助かります!」と。結果は全話通して見ても上手くいったと思います。
 シュン役の堀江瞬さんは今泉音響監督の推薦。「名前が同じなのは偶然で、(役柄的に)合うと思ったから」と今泉音監。板垣も思いました、「ピッタリ!」って。ご本人とお話したところ、名前よりも雰囲気自体がやはりシュンに似てました!
 カティア役の東山奈央さんは、堀江さん同様、自分とは初めて(ですよね?)。男言葉の凛々しさと、お嬢様言葉のギャップが素敵でした。実は転生前の大島叶多役もやってみようってことで、オーディションの時は男子高校生声にチャレンジしていただいたりと御無理をさせてしまいました。ごめんなさい。