COLUMN

第687回 ちょっとアニメ現場の話

お願いがあります! アニメで飯を食ってる各セクションのスタッフの方々、もう少し我々「手描きのアニメーター」に協力的になっていただけないでしょうか?

 もちろん、アニメーター以外のアニメ制作業務に携わるスタッフさんの中にも「俺たちだって1話あたりのギャラは全然安い!」と仰る方がいるのも充分承知しております。ただ! 「1話あたりが安くても、その実労働時間は?」とお尋ねしたいのです。例えば1話あたりが5〜10万円の業種だったとしても、その実労働時間が1〜2日(8〜16時間)なら週2〜3本掛け持ちで結構な稼ぎになるでしょう? ところが手描きのアニメーターは1カット4〜5千円の原画を1〜2日かけて描くんです。動画の月給に至っては、とある業種の「1話分または日給」ですから! まあ、最近でこそウチも含めアニメーター(原画・動画とも)固定給にする会社は増えてきてますが、それでも全体の制作費はなかなか上がらないのが現実。
 ああ、そういえばだいぶ前、ホン読み(脚本打ち合わせ)の時、

「いや、このシーンをこっちのキャラの方のやり取りにすれば、CGじゃなく作画になるので安く上がりません(笑)?」

と言ったライター(脚本家)さんがいました。(笑)はあくまで板垣主観のイメージで。けど、少なくとも俺からはそのライターさんの悪気なく言った「作画になると安く上がる」が「所詮CGアニメーターより安い下っ端映像クリエイターである君ら作画アニメーターに、僕の一筆で仕事振ってやろう(嘲笑)」に聞こえたんです。被害妄想でしょうが、その作品の監督として参加してはいたものの、アニメーターでもある自分からすると、そのライターさんの一言は極めてデリカシーを欠いたものとして、俺の耳に届いたのです。すみません。そもそも、

CGも作画も同じ映像を作る仕事なのに「作画でやると安くなる」って何!?

 つまり何が言いたいかというと、別に実労働時間の割に高給取りのスタッフに対して、そのギャラを作画に分け与えてくれ! などと言うつもりは毛頭ありません。そんなことしたって制作費自体は上がりませんから。冒頭で言った「協力的に」とは、それぞれの役職の範囲内での気遣いをお願いします、てことです。例えば脚本の先生が1週落すことはテヘペロで済ましがちですが、その1週間はダイレクトに作画のスケジュールを奪っているということを忘れないでほしい! とか、音響の現場でフィルムに色が着いていなくてやり辛いのは分かるのですが、現場のアニメーターは血眼で直している最中だったりもするわけで、なんとか演出のメモ書きで乗り切ってもらえないでしょうか? とか、本当に助け合いみたいなもので充分なのです。もちろんアニメは作画だけではありません。脚本・コンテ・演出・CG・美術・仕上げ・撮影・音楽・音響・制作……そして当然キャストの皆さん。どれが欠けても成り立ちません。しかし、その中でも手描きアニメーターは、ツールはデジタルに変わっても、全く生産量に結びつかなかったセクションで、これからも働き方改革とかでますます不利になっていくと思うのです。だから冒頭の一言、よろしくお願いします!