編集長・小黒祐一郎の日記です。
2020年5月10日(日)
自宅でワイフに頭を刈ってもらう。ワイフは大喜びでやってくれた。事務所で「設定資料FILE」の構成を進める。いつも作業に使ってる大きな机を「アニメスタイル ONLINE SHOP」の在庫を置くために片づけてしまったので、小さな机でちまちまやる。
このところ、Twitterで【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】というハッシュタグをつけて、ネットで無料配信されているアニメを紹介している。今日は『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!! 黄金のデジメンタル』だった。以下がそのテキスト(すでに無料配信は終わっているので、映像へのリンクは削除した)。お気に入りの文章だ。
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【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!! 黄金のデジメンタル』が無料配信中(5/16(土)23:59まで)。会員登録不要です。『デジモン』劇場版第3作で監督は山内重保さん。凄まじい作品ですよ。
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細田守監督の『デジモン』劇場版第1作、第2作がリアリティを基調としているのに対して、山内重保監督の劇場版第3作は感覚重視の作品です。「ムードを楽しむ」作品であり、「セリフや理屈以外の部分が重要」な作品です。
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作画を含めた画作りも、音楽も素晴らしい(音楽の使い方も凄い)ですが、演出家の映画です。圧倒的に。後半の悪夢的な部分は本当は劇場で楽しみたいところ。なるべく集中してご覧になるのをお勧めします。
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Amazon Prime Videoで「晴れた家」を観る。これは「トニー滝谷」のメイキングだ。撮影風景が観られただけでもよかった。その後は「YESTERDAY」の吹き替え版から『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』に。意図せず「YESTERDAY」つながりとなった。『オトナ帝国の逆襲』って「過去と未来の対立」の物語ではなくて、理想化された過去という「幻想」を、地に足のついた「現実」が打ち砕く話なのね。どこかで誰かが書いていると思うけど。
市川準監督の「つぐみ」を観た流れで、吉本ばななさんの「日々のこと」を読み始める。本文1行目で市川準監督の名前が出て「おおっ」となる。1980年的な文章のノリが懐かしく、照れくささを感じた。
2020年5月11日(月)
早朝散歩で、朝5時から営業している手作りパン屋でパンを買う。15時半から事務所スタッフとSkype打ち合わせ。16時からある書籍について、ビデオ会議(こちらはSkypeではなかった)。自宅マンションに10年以上あった段ボール箱10個を、事務所スタッフに手伝ってもらって事務所に運ぶ。段ボール箱の中身はCDや本だ。在庫でいっぱいの事務所にますますモノが増える。
2020年5月12日(火)
Twitterの【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】では『デビルマン 誕生編/妖鳥死麗濡編』を紹介する。「設定資料FILE」の作業が終わった。今回の「設定資料FILE」は『BNA ビー・エヌ・エー』だった。近年は表情集の少ない作品が多いのだけど、『BNA ビー・エヌ・エー』は表情集がかなり多い。人間の姿と獣人の姿で別の表情集があり、さらにポーズ設定も多い。構成していて楽しかった。
Amazon Prime VideoのNHKオンデマンドで「これは経費で落ちません!」を視聴する。放送中にも話題になっていたのだけれど、確かにこれは面白い。
近所の居酒屋「築地食堂源ちゃん 東池袋店」が営業再開。ただし、営業時間は20時まで。これで毎日ホッピーが飲める。いや、さすがに毎日飲みはしないけど。今日は源ちゃんではなく、同じく時間短縮で営業を再開した某店に。久しぶりにホッピーらしいホッピーを飲んだ。不思議なもので、自宅で吞むホッピーは何か違うのだ。
2020年5月13日(水)
この日も基本的にデスクワーク。「アニメスタイル ONLINE SHOP」で「今石洋之アニメ画集 スペシャルセット」初回生産分の第2次受付を開始。「これは経費で落ちません!」を7話から最終回の10話まで観る。主人公・森若沙名子の恋愛模様は思っていたのと違ったなあ。これは単純に好みの問題です。早めの晩飯は源ちゃんで。
2020年5月14日(木)
朝から寒気がして熱っぽい。あまり外出はしないで、事務所でデスクワーク。散歩に行かなかった分だけ、作業が進んだ。『イエスタデイをうたって』『八男って、それはないでしょう!』『波よ聞いてくれ』をそれぞれ最新6話まで配信で観た。
2020年5月15日(金)
ずっと事務所でデスクワーク。宅配サービスで晩飯を注文したのだが、到着予定時間に「注文された店が休みだったので、届けられません」という電話があった。宅配サービスの会社と飲食店の連携が上手くいってないようだ(後日、その飲食店の前を通ったら、コロナ対策でしばらくは営業を休むとあった)。
手塚治虫さんの「バンパイヤ」をKindleで最終巻まで読んだ。以下は「バンパイヤ」について思ったことだ。知らない人もいるはずなので先に説明しておくと、作者である手塚治虫さんは「バンパイヤ」の主要登場人物でもある。
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手塚治虫の「バンパイヤ」を読み返した。最初に読んだのは小学生の頃だった。当時はとにかく面白い作品だと思った。今読んでもスピーディな展開は飽きることがなく、小学生の自分が楽しんだのもよく分かる。ファンの多くが同様だと思うが、当時はロックの悪魔的なところに惹かれていた。
ただ、読み返すと粗いところが気になる。大きな部分は、第1部の後半で描かれるバンパイヤ革命だ。今ひとつ計画の全体像が分からないし、計画が上手くいってしまうことに無理があると思う。当初の計画通り、バンパイヤがマッドPAを使って人間を原始人のようにしてしまうほうが自然だったのではないか(そして、手塚治虫達が同じマッドPAを使って逆転するとか)。実際にそういうつもりで描いていて、段取りの都合でマッドPA無しでバンパイヤ革命が成功してしまうことになったのかもしれない。
読み返して笑ったのが、ロックと岩根山ルリ子が帰国した際の展開だ。たまたま手塚治虫が作ったバンパイヤの正体を暴く映画がテレビ放映されており、空港にいた人達が映画の指示に従ってルリ子に玉ねぎを投げるのである。なんでたまたま空港にいた人達が玉ねぎを持っているんだ、と突っ込まずにはいられない。まあ、マンガらしいと言えばマンガらしいが。
「バンパイヤ」の第2部は未完で終わっている。小学生の時は続き読みたくてたまらなかったが、読み返すと、続いたとしても第1部ほどは面白くなかっただろうと思える。
さて、以下が本題。
ずっと気になっていたことだ。
物語の序盤で、主人公のトッペイは虫プロで働いている。彼の机の引き出しには大量の電信柱の写真があり、それを知った手塚治虫は「へんたい性じゃないかしら」と言うのである。この場合の「へんたい性」のへんたいは「変態性欲」のことだろう。最初に読んだ頃から、このセリフが気になっていた。小学生の僕は、いくらなんでも電信柱と変態を結びつけるのはあんまりじゃないの、と思ったわけだ。今ならそのくらいの人はいるかもしれないと思えるし、少なくともフィクションで描くのはありだと思う。
ここから先は(中学生の頃からなんとなく考えていた)想像なのだが、作者としての手塚治虫はバンパイヤの変身に、自慰行為のイメージを重ねていたのではないか。登場人物の1人である岩根山ルリ子の変身は明らかにエロチックなものとして描かれているし、彼女が最初に変身する時に、トッペイに対して「あっちをむいて!!」と言うのも、トッペイが顔を赤くするのもそれを思わせる(人間の姿になった時、一度は裸になるはずなので、そのために「見ないで」と言った可能性もあるのは分かっている)。
バンパイヤにはそれぞれに変身するきっかけがある。「コショウをかぐと」とか「おへそをくすぐられると」とかそういったきっかけだ。つまり、「それぞれに性癖がある」ということなのだろう。バンパイヤ秘密本部での集会の後に、大コマで大勢のバンパイヤが人間に戻ろうとして苦心するという描写があるのだが、自慰のイメージを重ねているとすると大変な場面だ。岩根山ルリ子の変身のきっかけは玉ねぎの匂いだ。秘密本部での集会の前に、玉ねぎの匂いが弱くて、なかなか変身できないというくだりがある。オカズの刺激が足りなかったのだろう。
行方不明になっていたトッペイの父親は電信柱を見ると変身するらしい。トッペイの父親にとっては電信柱の写真がオカズだったのだ。トッペイは父親にとって必要かもしれないと考えて電信柱の写真を集めていたのだろう。
つまり、何を言いたいのかというと、電信柱の写真を見た手塚治虫の「へんたい性じゃないかしら」という発言は、この作品の本質的な部分に関わるセリフだったのではないかということだ。
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2020年年5月16日(土)
自分の体調はよくなったのだけど、今度はワイフが頭痛。早朝散歩はおやすみ。事務所でキーボードを叩く。雨が続いたため、Eテレで劇場版『若おかみは小学生!』を観る。放送中に『若おかみは小学生!』についてツイートをしていたら、Twitter上で豊田智紀プロデューサーに、編集作業中の原画集の遅れについて突っ込まれる。すいません。急ぎます。その後、吉松さんとSkype吞み。
YouTubeで『美少女セーラームーン』を観る。33話から35話が月のプリンセスがらみの連続エピソードで、中でも34話は演出・作画も充実で見応えあり。 【 #ネットで観られるお勧めアニメ 】関連のツイートで「34話でうさぎが変身する前に顔を赤らめるのは、衛に裸を見せるのを決意したため」と書く。ソースは自分が記事を担当した「アニメージュ」1993年5月号の鼎談だ。