COLUMN

第666回 自分にとっての不必要

 前回からの続き。で、俺が受験を止めた経緯の話。前述(第665回)のとおりクラスのほとんどが塾に通う中、それに背を向け高校受験も入試前1週間のみの勉強、というか「暗記」で挑んだ俺と、小・中学と真剣に塾で勉強した友達が、結果同じ高校に3年間通ったんです。「なんじゃこりゃ?」と。こんな適当な俺と、まじめに受験世代のルールに乗っかった友人がなんで同じ高校なのか? と。その気持ちの悪さが俺の高校3年間をさらに受験勉強から遠ざけることになり、「受験するならせめて美大」と考えるようになりました。絵の受験勉強なら自分でもやる気になるかと思って。
 てなわけで、自分は高校時代、河合塾美術研究所というところの夏期講習と冬期講習のみ通い、デッサンやらクロッキーやらを勉強しました。でも本当の本音を言うと、受験のためというより夏・冬長期休暇のヒマ潰し感覚だったのかもしれません。でも、その講習でよかったのは、最後に進路相談をする時間が設けられていたことで、以下はその時の講師の方々のお話。

講師1「(板垣のデッサンを見て)うん、君の場合デッサン的には問題ないけど、あとは数」
講師2「高校、惟信てことは普通科でしょ。例えば旭丘(高校)の美術科とかは週何時間美術の授業があるか? 1枚何時間のデッサンを年間何百枚クラスが美大受験にはゴロゴロいるから」
講師1「週2時間の美術の成績がいくら良くても、問題は高校3年間で描いてるデッサンの量なんだよ」
講師2「でも絵的には可能性、十分あるよ。1年間浪人して(ウチで)デッサンみっちりやれば、たいがいの美大合格すると思う」
板垣「1浪ですか(嫌)」
講師1「将来的に何やりたいの?」
板垣「アニメの監督です」
講師2「あ、アニメだったら美大行く必要ないよ。アニメはとにかく実践。東デ(東京デザイナー学院)のアニメ科行きな。ただ東京校ね」
板垣「はい!」


 で、嬉々として飛んで帰り、母親に報告。講師さんに言われたことを説明して

 無事、皆と同じ受験ムーブメント(?)に乗らずに済んだのでした。何しろアニメ作りができる道が見えれば、受験勉強をしなくて済むと。一応、念のために言っておきますが、自分は今まで知らなかったことを知る・教わるのは大好き。即ち勉強は好きなんです。成績は良い方でしたから。ただ、

なんとなくでも絵を描くことが好きで、なんとなくそちら方面でやっていけそうであるなら、ただでさえ猫も杓子も大学受験で、皆が「大学行きたい」時代なら、自分は身を引こう! 俺は大卒という鎧を身にまとわずとも社会に出て行ける! 覚悟完了!

と。
 もちろん、受験・大卒が必要な人はいます。だからこそそういう方に、小さいけど俺1人分の席は空けたほうが世の中のためだと思ったのです。本当に必要な人にこそ、その必要な事・物がまわる世の中が自分は良いと考えています。俺は自分自身の腕を磨くために大卒(鎧)は不要だった。ただそれだけのことです。