COLUMN

第654回 アニメーターとしての終末(2)

 前々回(第652回)の続き。アニメファンでアニメ史に興味がおありな方であるなら、とうにお気づきだとは思いますが、「アニメーターとして生を全うした方々」というのは、近年ようやく多く見られるようになったのです。もちろん戦前〜戦後、商業アニメーション以前の大先輩もいらっしゃったわけですが、その時代では横山隆一先生や酒井七馬先生といったマンガ家さんであったり、映画会社で短編アニメを作ってた市川崑監督だったりと、どちらかというと研究発表に近い様相のアニメが主流だったようで、今と違い生涯をアニメーターとしてギャラ(給料)をもらい続けた方は少なかったのではないでしょうか? 今回話題にしてるのは東映動画&虫プロ以降の商業アニメーション、いわゆる世間一般に知られている「低所得かつ過重労働なイメージがスタンダードのアニメーター」の終末を目の当たりにするようになったのは、つい最近であると。そのくらい自分らのやってるアニメーターという仕事は、世の中に数ある職業の中ではまだまだ若い部類。だからこそ、前々回語ったご年配のアニメーターの行く末が気になるんです。前々回説明したとおり、

アニメーターは歳をとると、当然目も悪くなるし、集中力も散漫になるし、自分が描きたい画と世間から要求される画のギャップは激しくなる一方!

なんです。その上付け加えるなら、50過ぎてどこかのスタジオで取締役でも社員でもなければ、誰にでも必ず訪れる老い、それに伴う画の劣化、何よりこなせる仕事量の低下によって、収入は減少必至。専門学校の講師なども年配枠は限りがあるでしょう。
 実は前々回話題にした、自分がフリーになって演出駆け出しの頃、たまたまご一緒した年配アニメーターさん、数年前行き倒れのホームレスとなって発見されたと知人より聞かされました。職人として脂がノってた頃は、某名作の作画監督としてアニメ誌に特集されたりもした方でしたが、晩年は思ったように原画が上がらず、いろいろ世話してくださった社長さんらの期待を裏切り続け、現場から逃亡、の繰り返しだったそうです。 つまり「平均的なアニメーターの誰にも許された生涯の終え方」ってどなたかご存知なのでしょうか? と。まぁ、マンガ家が売れなくなったらとか、役者さんだって仕事が来なくなったら? スポーツ選手の引退後は? などと同様でしょうと言われると「確かに」と答えるしかありません。しかしアニメーターはそれら人気商売(?)の中で、作品が当たった(売れた)としても利益を得る率が相当低いのも確かな話。何しろキャラクターデザインは1(〜3)人でも作画する人はとにかく多勢。そのすべてのアニメーターに利益を分配することはかなり困難なのです。
 だからといって、それらアニメーターの困窮状態をSNSなどで訴えたり「自分さえ良ければ」思考でフリーのアニメーターらが「僕は○万出さなきゃやりません!」と主張したって事態は良くなりません。

 う、テーマが壮大すぎて収まるはずがない(汗)! 時間です!