COLUMN

第645回 それでもやっぱり監督はコンテ!

アニメにおけるコンテはかなり重要な役職! 監督がそこを他人に任せっきり(無修正で使用)で手柄は監督って虫がよすぎだと思う!

って話の続きから。これを言うと「監督は打ち合わせを密にしてコンテを人に任せるべきでしょ!」と仰る方もいると思います。もちろんそれも賛成です。ただその「監督なら人に描いてもらう努力をするべき! 己で描いたら監督じゃない!」理論を詭弁として使い、ろくに自前のコンテを出さず、ろくにチェック(修正・調整)せずに監督作品を掛け持ちして、荒稼ぎするのはどうかと思います。例えば第1話と最終話だけ自分でコンテを切る監督作を年間5〜6シリーズ掛け持ちするくらいなら、1シリーズのコンテを半分以上切り、それこそ「密」に1作品を監督するべきだと思います。それが創作に対する誠意のはずだし、プロデューサーもそういう密な監督作品を作らせて初めて、その作品が売れた時の評価を返すべきなのではないでしょうか? まあ最近は監督の人数も増えたので、1人の監督に一極集中みたいなことはだいぶ減ったように思いますし、掛け持ちしてない上で1〜2話分しかコンテが切れない不器用で一点集中・一所懸命型の監督は応援しますし、コンテでも原画でもお手伝いします、俺。逆にアニメーター(下手でも己が原画マン)出身のくせに掛け持ちし過ぎでパンク中のバブリー監督に、何が悲しくて単価仕事のコンテや原画を提供しなきゃならんのか? だから原画依頼の電話が来ると必ず訊くんです「監督だれ?」と。で、掛け持ちバブル監督だったら絶対受けません。以前、「板垣さんにオープニングをお願いしたい」と制作を通じて言ってきたバブリー監督がいたのですが、その名前を聞いて「何本も掛け持ちする腕のある監督様を手伝うなんてできません。そうお伝えください」とお断りしたくらいです。もちろん多少の例外もあります。例えば以前お世話になった制作さんやプロデューサーに頼まれた場合には描いたりしましたが、その方らには「俺は本来、薄い監督作を年何本も掛け持ちする人のお手伝いはしない主義」の旨を伝えた上で「今回限り」と言ってお受けしました。やはり恩返しに自分の主義・主張は関係ありませんから。
 以前も説明したと思うのですが、俺の場合、それぞれの監督作品のコンテ期間は重ねないようにしてます。仕事をお受けする際も「○月いっぱいで今やってる監督作のコンテが終わるので、そこからコンテINでよければお受けします」と。だから今のところ毎年1本監督をやり続けていられるわけで、自分なんかが売れっ子監督のマネして、全体の1〜2割しかコンテを切らず年間何シリーズも監督する不誠実な掛け持ちワークスタイルでやってたら、即干されてたとこです。不誠実なワーク……すみません、板垣にはそう見えます。何年も前に「え? 何であのアニメもこのアニメもそのアニメも!?」と周りのスタッフ誰もが首を傾げる売れっ子監督が「ついにアフレコもバックレた」「制作と連絡もつかない」云々の話が紛れ込んできたんです。そりゃあそうです。1週間は誰にとっても7日間しかないのです! そこだけは世界全人類平等なはず。なのに編集・音響(アフレコ&ダビング)・その他打ち合わせ類を引っ掻き集めてまる1日と計算したって、1作品につき最低まる3日はかかるってのに、週3本掛け持ちではハッキリ言って勘定が合いません(2日はみ出る)。そうまでしてその人に「ろくにコンテを切ることもできない監督」をさせたかったプロデューサーの真意を俺は知りたいですし、そこまでその監督をボロ稼ぎさせるために名乗りを上げる助(副)監督の気も知れません。ちなみに同時期、たまたま受けた某アニメ誌のインタビュー取材にて、「その売れっ子監督がつかまらなくて制作が困ってる」と話題にしたところ、編集の方が持ってきてたその某アニメ誌の最新号に、売れっ子監督がドヤ顔Vサインで写真入りインタビュー記事になってて心底呆れました。「雑誌インタビューにはつかまってんじゃん!」と。さらに、某アニメ制作会社社長から「○○(売れっ子)監督の作品、ウチにもきたけど断った! メーカーからは(売れっ子監督の)名前が上がっても、スタジオがどこも受けてくれなくて困ってるらしい(笑)」なんて話もありました。その売れっ子監督さん、俺とはまったく接点がない方なので、今は何をされてるのか分かりませんし、調べるつもりもありませんが、要するにフリーランス・作家系アニメ監督があちこちのスタジオをかしずかせて稼ぎまわるのが、昨今キツくなってきたみたいですって話でした。