前回、アニメの本数を減らせば、アニメ業界あげてのアニメーター不足——主に作画監督(作監)不足問題が解決するような単純な話ではないって話の続き。これに関してはいろんな意見があって当然だし、各々の現場で対策を講じるのが第一。ウチなりに考えたやり方が、前からちょくちょく話題にしている「完全デジタル化」だということ。当たり前ですがそれだけですべて解決するなんて考えてません。そもそもデジタル化程度なこと、規模は違えど他社でも普通に進めてますから。制作費を上げる努力も、新人育成もすべて重要。自分の周りの制作会社の社長やプロデューサーらと情報交換をすると、やっぱり皆さん同じ話しをします。アニメ業界が「ピンチだ」「崩壊だ」とTwitterやらSNSで喚いてる人をちょくちょく目にしますが、その手の内容を信じる信じないは自由です。ただ仮に「アニメもうダメだ!」「そうだ、ダメだ!」「このままではアニメはダメに」とか言ってる人たちだけで「俺たち仲間!」と徒党を組んだって、業界を変えられるなんて絶対思えないのです。逆に「アニメ大好き!」「アニメ作り最高!」なテンションの人だらけで集った場合も同様だと言えるでしょう。俺は何事も同意見の者だけの集団で、何か大きなことができるとは思えないんです。友達みんなで同じ会社に集まった時も、仲良く楽しい飲み会が増えただけでした。だって飲み屋で業界の問題点を語らっているだけで、なぜか「今晩はアニメのためになることを言った!」と思えたんです。でもその実、振り返ってみると、それぞれがフリーでバラバラにやりたい仕事をやる空間がそこにあっただけで、皆でひとつの作品を作ることなぞできてませんでした。たぶん当時自分らが築いたものは「各々がただただ気持ちよい場所」だったのです。でもそれは20代で終わり(にしたつもり。個人的には)。
ちなみに俺自身は「アニメ作り最高!」タイプだと自覚してます。だけどウチの採用基準として、自分と同じテンションの人でなければならないなんて微塵も思ってません。「仕事と割り切ってアニメやりたい」という人にも「じゃあとりあえずやってみる?」と合格にします。そのへんはかなり大雑把に集めます。月並みな話、
いろんな意見・考え方があるから人間なんだし、それが面白いから集団でアニメを作るんだ!
と思ってます。そこでテンションにバラつきのある俺らスタッフの中心に「作らなければならない作品」を置いて一気に作り上げる。黙々と文句ひとつ言わず描き続ける者から、絶えず思想・観念ばかり語ってるだけの者まで様々。そのバラバラの中でひとつの作品を作り上げ、「またやりたい!」と思うスタッフがまた次を作るし、「こんな作り方ゴメンだ!」と会社を去る。それらの繰り返しの中、それぞれの思い出に残る作品もあれば失敗作もできる。その1作で去ったスタッフも含めて一緒に名前が刻まれる。作品ごとの一期一会もまたこーゆー仕事の醍醐味。
「作らなければならない作品」とは
「やらなければならない仕事」と言い換えられます!
まあ何が言いたいかというと、スタッフがいて作品があるのも間違いないけど、作品があるからスタッフが集まるというのも確かであるはず。自分の予想——これから作品(アニメ)が減ったらスタッフも減りますよ、たぶん。
スタッフ間で理念も観念も実務能力もテンションもバラバラ。それら諸々の条件の中でもがいて、どんなかたちであれ意地でも作品を作り続けることが、今の自分には向いてると思うし業界のためになると信じています!