COLUMN

第595回 風邪全快と作監の話をまた

1人の作監が2人に。
3人、4人、5人、10人!

 こんな感じで昨今、アニメは作画監督(作監)の人数が増える一方。TVシリーズは言うに及ばず、劇場作品ですら作監補佐まで入れて10数人とか当たり前になって久しく、アニメ業界をあげて「作画監督不足!」が問題になっています。原画マンより作監です、どこのスタジオも欲しているのは。現状、自分の実感としては、海外撒きを視野に入れていれば「原画マンが埋まらない」という相談件数は以前より減っています。昨日も2件「作監で手を貸してほしい」との電話があったくらいです。1件は劇場のパート作監、もちろん次作品(春先にはPVの発売予定)のコンテ真っ最中の自分には無理なので、丁重にお断りしました。そしてもう1件は、ウチ(ミルパンセ)に「某TVシリーズのグロスを」とそれもウチの次作品とスケジュールまる被りで「難しい」と電話を切ろうとした寸前、やはりここでも先方の本音が伺えました。「じゃあせめて1〜2週間作監貸してもらえません?」と。やはりどこも作監が欲しいようです。
 自分は作監もやります。実は『ユリシーズ』でも作監が足りない時、ちょくちょく手伝い程度にはやってました。他所様のスタジオのスタッフを立てるため、自分はノンクレジットにしてたんです。ただ最近は上がってきた原画の8〜9割をほぼ演出と作監が血眼で描き直しするのが通例。

早い話、作監が描くものが原画で、制作さんがかき集めてる原画はその下描き! アニメの制作本数が増え過ぎた昨今、まともに原画教育がなされていない人を原画マンにするため、それを直す側が必死なのです!

 いわゆる最近の「作画崩壊」とは、制作さんがサボってるのではなく、コンテを引っ張ったからとかでもなく、大概は大手の制作会社との「作監争奪戦」に負けた中小制作会社によって起こるのです。つまり作監を入れてない酷い原画(下描き)のままで良ければ、番組を落とすことは減ると思います。でも現状ノー作監でフィルムを作っても、委員会から納品拒否を食らうことになるだけでしょう。
 だからといって「アニメの本数を減らせ」とか、単純なことではない——って話は次回(汗)!