アニメ監督の仕事は、やることなすこと「同時進行」が基本!
になります。今回の『Wake Up, Girls! 新章』も例外ではありません。コンテ作業ひとつとっても、本編を描いているとオープニング・エンディング曲が上がってきて、即コンテIN。本編の合間を縫って同時進行。OP・EDが終わると、アイドルものの常、ダンスパートのコンテが新曲が上がってくるたびに同時進行となります。その作業効率を2倍、とまではいかないまでも1.5倍くらい(?)には上げてくれたのが、以前もここで紹介した”コンテ作業のデジタル化”、「Storyboard Pro」です! OP・ED曲がくると、Storyboard Proの方にインポートして、タイムラインにのせて(ダンスパートなどは、使用する部分をこの段階で仮編集します)、それに合わせてカットを割ってカメラワークと尺を決めます。なにしろ、
コンテを切りながら簡易ムービーが次々できていくわけ!
つまり、編集用・アフレコ用のいわゆる「コンテ撮」が必要なくなる!
のです。さらにコンテのパネル(1コマ)を拡大・縮小・回転・コピペなどもでき、レイヤーに分けて着引き(素材別にスライド)まで。だからこれ「アニメーター出身の演出家」の手に渡ったら、そーとー便利! なにせ、
コンテ切りながらレイヤー重ねて清書すればレイアウトになり、
尺内でパネルを増やしてラフ原まで描けます!
『ベルセルク』のOP・EDや『WUG! 新章』の第1話も、レイアウトまで自分で描けたのはStoryboard Proのおかげ。あ、そうそう、ストップウォッチを握る機会もだんぜん減りましたね!
しかし、コンテのデジタル化、問題がまったくないわけではありません。デジタル作画と同じで、際限なく拡大できるため、却って作業効率が下がるとか。そこは「拡大していいのは何%まで!」などと自分を律して対応するしかありません。ただいちばんの問題点は、意外に
てな、我々世代までが憧れる「作家気取り」ができなくなるってことかと(笑)。まぁ冗談はさておき、「デジタル」コンテは同時作業がしやすいという話。つまりデスクトップに現在作業中のコンテ類のフォルダーをいくつも作って、脚本や設定資料類を一緒に置いておき、毎朝会社に入ったとこで「○○時〜○○時まで『WUG! 新章#○○』」と次々に開いて、1日の時間割をするわけ。紙類と違って資料類の出し入れは本当に楽。この連載も描きやすくなって、大変心地いい毎日を送ってます。
で、デジタル化については人それぞれご意見があると思いますが、俺個人が考えているのは純粋に、
こんなに便利で楽しいツールを、今、小・中学生が遊びで使いこなして、10年後業界に入ってきた時、「アニメのコンテは紙に描くと昔から決まっとる! ワシは紙じゃなきゃコンテは切らん!」と仰る年配を見てどう思うのでしょう?
ってことだけです。ウチの会社を受けにくる若い人にも、志望動機を聞くと「デジタルで作業してるスタジオだから」って答える人が増えてきたし。ちなみに自分は「紙」も大好きです!