COLUMN

77 アニメ視聴は戦いだ

 2016年の現在、僕にとってアニメ視聴は戦いである。戦いになってしまうのは、放映中のTVアニメを一通り観ようとしているからだ。好きな作品、あるいは気になるタイトルだけを観ているだけなら、戦いでもなんでもない。単純にアニメを楽しむだけだったら、放映が終わってから人に勧められた作品や、評判のいいタイトルをネット配信やパッケージでまとめて鑑賞すればいい。それも理想的な視聴スタイルのひとつだと思う。

 残念な事に僕は、TVアニメを一通り観たい人なのだ。実際には全てを視聴するのは難しいのだが、理想としては全部を観たい。

 今さら言うまでもない事かもしれないけれど、現在、放映されている新作TVアニメの本数は多い。アニメスタイル編集部の調べによれば、この10月にスタートする新番組は70本を越える。
 
【情報局】新作アニメピックアップ[TV編]160928 秋の新作は70本超!
http://animestyle.jp/news/2016/09/28/10518/

 という事は、新番組をチェックするだけでも、1日あたり10本のTVアニメを視聴しなくてはいけない。それ以外に継続作品もあるのだから、1日に観るべき本数はもっともっと多いわけだ。さらに言うと、僕の場合は仕事で過去の作品を観る事が多い。例えば、取材前にそのクリエイターの作品を何本も観る。場合によっては数クール分を視聴する。その分だけ、新作アニメを観る時間が削られてしまう。
 1週間は7日しかないし、1日は24時間しかない。睡眠はとらなくてはいけないし、仕事もしなくてはいけない。ここ数年、ウォーキングをやっているのだけど、それも時間がかかる趣味だ。残された時間で効率的にTVアニメを視聴しなくてはいけない。ノルマという言葉が、頭をよぎる。嫌だなあ。本来は趣味であり、人生を豊かにするためのものであるはずのアニメ視聴で「効率的」とか「ノルマ」なんて言葉は使いたくないなあ。本数が多ければ、その多さを楽しむくらいの余裕がほしい。いや、これは自分で自分に向かって言っているんですよ。
 7月新番は「これは後でじっくり観よう」と思って視聴を後回しにしてしまったため、いまだに消化できていないタイトルが数本ある。10月新番は溜め込まずにどんどん観ていきたい。

 放映作品が多いという事は、新しい魅力のある作品、派手ではないが丁寧に作られた作品、創意工夫や熱意の感じられる作品等が、注目を集める事がないまま過去のものになってしまう可能性が高いという事でもある。よいものを見つけて、それを紹介するのがアニメ雑誌編集者の仕事だ。本数が多くても、放映されているアニメに目を通したいのは、それをやり続けたいからでもある。

●イラスト/サムシング吉松