COLUMN

67 女性誌「anan」の『おそ松さん』特集

 もう数ヶ月前の話題であるが、女性誌「anan」の『おそ松さん』特集について記しておきたい。2016年5月18日号(No.2003)の特集「おそ松さんがやってきた!!」の事である。

 僕はライター&編集者として30年間アニメ雑誌に関わってきた。その立場で言わせてもらうが、この「anan」の特集は凄かった。とんでもない充実ぶりだった。
 6つ子のグラビアイラストと彼等へのインタビューを中心にした構成だが、表紙を含めて描きおろしイラストの数はおそらく16枚。原画はキャラクターデザインの浅野直之さん。とんでもない大盤振る舞いである。キャラクターへのインタビューはシリーズ構成の松原秀さんが原案を担当している。これも豪華だ。
 
 注目したいのは6つ子のグラビアイラストである。いずれも上半身裸の上に白いワイシャツを羽織った姿、あるいはそのバリエーションと言っていいだろう。清潔感があり、ちょっとセクシー。僕は女性誌には詳しくはないが、いかにも女性誌のグラビア的だと思った。

 アニメ雑誌はかなり前から、実写のアイドルやモデル達のグラビアページをイメージした誌面を作ってきた。僕も若い頃に、キャラクターのグラビア的なページを作るために、男性雑誌やマンガ誌のアイドルやモデル達のページをスクラップしていた。それを参考に描きおろしイラストを発注し、誌面を構成していたのだ。だけど、そうやって作った誌面にはどこか「なんちゃって感」がある気がしていた。申し訳ないけれど、他のアニメ雑誌のライターさんや編集さんが作ったグラビア風のページにも「なんちゃって感」を感じる事が多かった。

 「anan」の『おそ松さん』特集に驚いたのは「なんちゃって感」がない事だ。ページをめくって「ああ、これは本物だ」と思った。

 普段、男性アイドルやモデルのグラビアページを作っている人達が作ったのだ、本物を作っている人達が作ったのだから、本物になるのは当然だろうと言う人もいるだろう。それも間違いではないのかもしれないが、だとしてもそれだけではない。アイドルのグラビアページとして完成度が高いうえに、アニメ雑誌以外の媒体の方がアニメを扱う場合にありがちな、詰めの甘さや微妙なズレ(コアなアニメファンが感じるズレ)がないのだ。きちんと作り込んであるし、甘さもなければズレもない。ストレートのど真ん中だ。

 特集にかけた手間や予算、仕上がりの見事さにおいて「anan」の『おそ松さん』特集は、アニメ出版物史に残るものである。この充実ぶりが「anan」編集部の技量によるものなのか、あるいは編集に関わった方の「愛」によるものなのかは分からない。ただ、凄いなあと舌を巻いた。

 僕がこの「anan」を読んだのは、『おそ松さん』が巻頭特集の「アニメスタイル009」の編集を進めている時期だった。勿論、「anan」とは違った方向で充実した特集にしようと思ったのだった。


●イラスト/吉松孝博

anan (アンアン) 2016年5月18日号 No.2003 [雑誌] Kindle

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(2016/09/16)