インタビューというのは面白いものでもあるし、難しいものでもある。例えば、相手が取材を受けてくれたからといって、こちらが聞きたい事を話してくれるとは限らない。
同じインタビュアーが、同じ取材相手に同じ事を聞いても、聞く段取りによって違った答えが返ってくるかもしれない。取材の日がひと月違うだけで、まるで違うインタビューになる事もあるだろう。取材する側の心構えや準備が重要であるのも間違いないが、それだけではどうにもならないところがある。だから、面白いとも言えるし、難しいとも言える。
僕が「アニメージュ」で担当しているインタビュー企画「この人に話を聞きたい」第百八十六回(2016年5月号 vol.455)で田中将賀さんに登場してもらった。
今まで何度か、田中将賀さんに取材をしているが、「この人」のインタビューは、今までのどの記事とも比較にならないくらい、踏み込んだものとなった。大学時代の挫折と、それがあったからこその仕事へのとり組み方。複雑な感情を複雑なままに描き出す表情作画。演出に踏み込んだ仕事と、作業量が多くなりすぎてしまう事のジレンマ等々。変な言い方になるけれど、僕が新人ライターだったら「どうしてこんなインタビューをする事ができるのだろう」と不思議に思うくらいの内容になっている。
今回の取材がそういった内容になったのは、僕が「田中将賀アニメーション画集」を作るなどして、田中さんの仕事についての理解が深まったからというのもある。田中さんとしては大きな仕事だった『心が叫びたがってるんだ。』の作業が一段落し、そして「田中将賀アニメーション画集」、対談集「田中将賀ぴあ」が刊行。自分の仕事について振り返る事が多かった時期であり、その想いを言葉にしてくれたというのがあったようだ。
「月刊アニメスタイル」第6号の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』特集における長井龍雪監督、田中将賀さん、岡田麿里さんへのインタビューで、僕は『あの花』の「いい感じ」について訊いている。登場人物の普通のやりとりを観ていて「いい感じだなあ」と思う。その「いい感じ」は『とらドラ!』『ここさけ』にも共通しているものだ。第6号のインタビューでも長井監督達に答えてもらったのだけれど、「いい感じ」が生まれる理由について決定的な答えは出なかった。今回のインタビューで、「いい感じ」の秘密に少しだけ迫れた気がする。
(2016/04/22)
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