COLUMN

第113回 毎回いただいてきたお花への感謝


 小黒さんの発案から始まった「ここまで調べた『この世界の片隅に』」というイベントも、3ヶ月に1回開催のペースで、もう1年半続いたことになる。そのあいだに「大阪でもやってほしい」という声をいただいて出張版も行ったりした。2014年5月に広島で行ったレイアウト展の会場にもお花が届いていた。
 そのあいだ、こっそり楽しみにしてしまっていたことがある。毎回の会場に、原作者のこうの史代さんからお花が届けられていたのだ。いつも、「監督と皆様へ」とメッセージカードが添えられていた。
 このお花が届いている限り大丈夫、と何が大丈夫なのかよくわからないところもあるが、とにかく心強かった。

 最初の第1回目、2013年12月23日のときには、いつの間にか受付の近くにお花が飾られていて、イベントを終えた帰り際に気がついてしまった。このときの花かごにガーベラの花が混ぜられていたのは、こうのさんと僕らで『花は咲く』を作ったときの思い出が添えられているのだと勝手に思うことにしてしまっている。NHK『花は咲く』はガーベラをイメージに使っていて、こちらのスタジオで行った打ち合わせのときにも、こうのさんは「参考資料です」とガーベラの鉢を買ってきてくださった。

 第2回目の2014年3月23日には、われわれが会場の新宿ロフトプラスワンに到着するともうお花が置かれていた。ちょっと春めいてきた感じで、バラの横にスイートピーが添えられていた。
 3回目の6月1日には夏へ向かう季節らしくヒマワリが中心。7月20日の大阪も同じくヒマワリ。4回目になると、園芸に詳しくない自分にはもうなんだかわからない植物たちがいっぱいに。
 こうのさんの商業誌デビュー作「街角花だより」はお花屋さんのマンガだったが、「この世界の片隅に」のひとつ前に描かれた「さんさん録」にも、初老男の主人公の息子の奥さん・礼花さんがお花屋さんに勤めている。実は、こうのさんご自身もその昔、花屋でバイトをしておられたとうかがっている。そのお店が、実は自分たちも知っている花屋だったので驚いたりもしたのだが、『花は咲く』打ち合わせのときのガーベラはその店で買ってきたものだったそうだ。


 「ここまで調べた『この世界の片隅に』5」のとき、開場前にいろいろと準備をしていた。このときはお花は届いておらず、毎回毎回贈っていただくのもあまりにも恐縮なので、半分ホッとして、半分残念な感じだった。
 すると、気がつくと会場に今までそこになかった花が存在しているではないか。
 「お花屋さんが来たのかな。気がつかなかったな」
 といっていると、会場の入り口近くにいた人がいった。
 「今、こうのさんが見えられて、お花置いていかれました」
 な、な、な、なにい。
 内心慌てふためいた。まさか、まさか毎回(いや、さすがに大阪は違うと思うけど)ご自分で会場までお花を持ってきてくださっていたのでは。
 こうのさんにお目にかかる機会があったので、聞いてみた。
 「いや、あの時はたまたま新宿の画材屋さんに行く用事があったので、そのほうが早いかと。直接持っていったのはそのときだけです」
 少し安心しました。
 ところで、と話題を切り替えてみた。次に開催される3月8日の「ここまで調べた『この世界の片隅に』6」で、このイベントのシリーズは最終回にしようということになってるんですが。
 「そのお、最終回ですから特別ゲストみたいな感じで、こうのさんも出ていただいけないでしょうか?」
 おそるおそる聞いたつもりだったのだが、返事はきっぱりしていた。
 「いいですよ」
 「いいですか?」
 「前からいちど出てみたいと思ってたんです」
 それから、当日はあんなこともやりたい、こんなこともやりたい、という話になっていった。

 ということで、2015年3月8日(日)開場正午、開演13時から、阿佐ヶ谷ロフトAで、「第96回アニメスタイルイベント 1300日の記録特別編 ここまで調べた『この世界の片隅に』6」を行う。
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/31360
 今回が最終回なのだ。

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