COLUMN

第368回 Wake Up, 板垣!(7)

 前回からの続き。『WUG!』#10のラスト、ダンスシーンです。ヤマカンさん(山本寛監督)とのコンテ打ちでは「ほどほどでOK!」的な話だったと思います。全部ガチでやると作画が大変になるからでしょう。ただ、こーゆー話になると、自分がまだまだ新人演出だった時——『グラップラー刃牙』のコンテをやっていた際、谷田部勝義監督が仰った一言が今でも気になるんです。

板垣さんは画描き(アニメーター出身)だから、出来の悪くなるカットなら最初からコンテに入れないとか、下手な画で上がってきたカットは(編集で)欠番にするとか考えるかもしれないけど、必要なカットは「必要」なんだから入れなきゃ(使わなきゃ)ダメですよ!

という言葉を。たしかに俺、以前この連載で書きましたよね、「コンテは楽譜だ!」と。例えば「ミ・ド・レ」でできてるメロディーがあったとして「ド」の音が汚かったからといって外して成立するか? と。つまりコンテでいうなら「俯瞰・仰り・正面」のカット割りが相応しいシーンであるならば、「仰り」の画が酷いからといって削ってしまったら成立しないんです。少なくともそれが本来のカット割り(コンテ)であるハズ! で、今回のダンスは? といえば

その真夢のダンスを見て号泣する母親!

なのだから、必要な数のダンスシーンは入れなければなりません。音楽が鳴り始めたそばから客席にカメラを振ってOFF(画面外)で曲を進めるなどでは母親は泣かないんです。あと個人的に「極上スマイル」という曲自体が気に入っていたし、ダンスもかわいかったので、なるべくダンスの方にカメラを向けて

WUG全員から客席全体への切り返しから
徐々に真夢と母親へと寄っていく!

計算をし、かつヤマカンさんがあまりやらない(と思う)斜め仰りや真俯瞰などメリハリをつけたカット割りをやってみました。コンテ決定稿(監督チェック済み)には「ダンスパートはCT(編集)時整理します」とヤマカンさんの一言が添えられてたので、俺「これは編集であちこちイジられるのか?」と覚悟してたら、ほぼそのまま使っていただけてて、とても幸せでした。あとで人づてに聞くと、ヤマカンさんも演出さんも「これ(このコンテ)計算されてて切れない」と言ってくださったらしく、これも大変嬉しかったです!