COLUMN

第202回 少女革命ウテナのこと その4

現在絶賛追い込み中の『Wake Up, Girls!』でありますが、そんな制作の現場にホンモノのWake Up, Girls!から3人メンバーが取材でやってきました。リアルなアイドルですよ! スタジオ中を廻って何かに使う写真撮ってもらっておりました。やがて僕のいる色彩設計部屋にも訪れまして、モニターに出したWUGの色見本見て大はしゃぎしてました!
それにしてもですね、Wake Up, Girls!若いです! 概ねみんな20歳前! 10代ですよ! これだけ若い女性って僕の周りにはさすがにいないので、キラッキラな感じで話しかけられちゃうとですね、オジサンはどう対応してよいのか困るほど!(笑) でもふと考えたら、僕と同世代の方で彼女たちくらいのお嬢さんがいらっしゃるお父さんって世の中にたくさんいらっしゃるんですよね! みなさんどうしていらっしゃるんだろう? すごいなあ。それだけで尊敬です!
……と、そんな話を隣の席で僕の色彩設計補佐してくれてる某Sさんにしたところ「ワタシなんか、あれっくらいの歳の頃って父親とは全然会話しなかったですよ!」って(汗)。う〜む、お父さん頑張れ!

さてさて。 漠然と決まっていた放映開始時期がハッキリしてきました。その放映開始に向けていよいよ制作の現場が大きく動き出します。
『少女革命ウテナ』はお話の主要な部分は幾原くん率いる制作集団「BE-PAPAS」で作りますが、アニメーション制作自体の実作業の母体はJ.C.STAFFが担うことになっていました。具体的には、ストーリー(脚本)、キャラクター設定はじめ作画関係の各種設定はBE-PAPAS、誰が何話を担当するといった、絵コンテ、演出陣の配置もBE-PAPASの管理だったのかな? J.C.STAFFは原画以降の全て、動画、仕上、美術、撮影などの作業管理、音響関係も含めてのスケジュール管理、という感じだったと思います。なので作業の現場も、西荻のBE-PAPASスタジオには幾原監督以下のメインのスタッフと各話の演出さん、一部の作画さんが、そして制作管理と実作業は三鷹・下連雀(当時)のJ.C.STAFFという風に別れておりました。

「どうも!松倉です!」ある日幾原くんから紹介されたのは、その制作チームの責任者の松倉氏でありました。J.C.STAFFの松倉氏といえば今や業界にこの人あり! という敏腕? 豪腕? プロデューサーですが(笑)、当時初対面の時からそのオーラとその風格は大したもの。まだ何にも一緒に仕事していないのに、彼と彼の率いる制作陣に、なんかね、スゴく安心したのを憶えてます。そしてその松倉氏の後ろに隠れるように小柄の女性が1人。『ウテナ』の色彩設計として松倉氏に連れてこられた店橋真弓さんでした。
先にもちょっと書きましたが、当時の僕は東映動画に所属していて、そちらでの仕事が基本メインだったので、この『ウテナ』ではガッツリと本編に関わっていくことができませんでした。なので、色彩設計さんは別にちゃんと立てて本編の作業はその方にお願いすることになっていました。僕の仕事は各キャラクターのカラーデザインと、夕方と夜の基本的な色変えのパターンを作る、というのが柱でありました。僕の方でデザイン出してOKになったものを店橋さんに引き継いでもらって、さらに『ウテナ』の世界を作り上げていってもらう、概ねそんな分担と流れになっておりました。
キャラクターのカラーデザインは、設定のコピーにコピックで着彩して作り込んできていたワケなのですが、その段階で僕の中では実際のセル絵の具での色の指定はある程度できあがっていたのです。で、そのデザインに実際の絵の具の色番号を色指定して、実際にセルに試し塗りをしてもらいました。そこからが店橋さんの作業になってたかな? 実はそのセルに塗る作業まで僕が自分でやるつもりでいて、松倉氏に頼んでBE-PAPASのスタジオにJ.C.STAFFで使っている太陽色彩の絵の具を一揃い用意してもらってたんですが、いざ取りかかろうという段になって、確か東映動画の方の劇場作品の仕事が佳境になっていて(確か『金田一少年の事件簿』)、結局店橋さんにお願いしちゃったのでした。
そうして塗り上がってきたセルの色見本を並べてバランスをチェック。色味自体はコピックで決め込んではあっても、セル絵の具で塗った収まりはまた別だったりするわけで、それはやはり実際のセルの塗り上がりを並べて確認するわけです。これがなかなか圧巻でした! 自分の頭の中での想像・想定を超えて、なかなかの存在感。それぞれのキャラクターの押し出しがシッカリとしていながら、全体に非常にバランスが取れて、ちゃんとひとつの「世界」に仕上がっていました。「うむ! 勝ったね!」自画自賛的にかなりの満足感でありました(笑)。
次に、そのできあがったノーマルの色見本を美術ボードに乗せながら、基本の夕景色、夜色の色指定をしました。そうです。この時点で初めて美術ボードに乗せて色味を作っています。一番最初、基本(ノーマル)の色を作るときには一切美術ボードは使いませんでした。まずキャラクターありき。キャラクターが中心の作品では、キャラクター間のバランスが勝負で、まずキャラクターだけでバランス取って作っていく、というのが僕の基本のスタイルで、それはデジタルになった今も本質的には変わっていません。あとはそのキャラ間のバランスを堅持したまま実際の背景とのバランスを展開していきます。
もっとも、この頃この時代は、アニメセルと紙に描いた背景を実際にレンズで撮っていたので、セル、背景のそれぞれの素材感と、セル+背景とレンズとの間に存在する空気のおかげで、乱暴な言い方ですが、どんな組み合わせでも大抵マッチした画面になったのでした。ただしそれはノーマルの画面についての話。夜や夕方などのいわゆる「シーンでの色変え」は当然ちゃんと方向性を揃えておかなければダメですが。

さて、概ねメインのキャラクターたちの色味が出そろった頃、いよいよ第1話の作業が始まっておりました。どんな作品でもそうですが、第1話ができるまでは、スタッフそれぞれの頭の中には完成イメージはあるものの、誰もその作品のできあがった形、完成形を観てはいないわけで、その誰も「正解」を知らない作品作りは、先ずは第1話を作っていく過程でだんだんシッカリした形になっていくわけです。

少女革命ウテナ Blu-ray BOX 上巻【初回限定生産】

価格/23940円(税込)
販売元/キングレコード
Amazon

少女革命ウテナ Blu-ray BOX 下巻【初回限定生産】

価格/23940円(税込)
販売元/キングレコード
Amazon

※「アニメスタイル ONLINE SHOP」で豪華画「少女革命ウテナ画集 The hard core of UTENA」を販売中!
http://animestyle.jp/shop/archives/10