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第37回 1999年(平成11年)『ONE PIECE』──原点回帰と子ども向けアニメの復権

TVアニメタイトルリスト1999年

 1999年は、『ONE PIECE』『おジャ魔女どれみ』など子ども向けアニメの名作が続出した年である。
 『エヴァ』に始まるアニメブームがピークを過ぎ、鎮静化に向かうのと相反するように、良質な子ども向けアニメが活気をとり戻し始めた。原点回帰ともいえるその動きは98年から始まり、長寿アニメシリーズとなる『おじゃる丸』と、児童文学を原作とした『夢のクレヨン王国』が先陣を切った。大地丙太郎、佐藤順一の両監督が、ほのぼのとした作風で両作を成功へと導いたのだ。その流れを継ぐように99年には、東映アニメがヒットタイトルを連発した。現在も続く尾田栄一郎原作の海洋冒険もの『ONE PIECE』、新機軸の魔法少女もの『おジャ魔女どれみ』、電脳世界を舞台としたバトルモンスターもの『デシモンアドベンチャー』の3作である。『ONE PIECE』『どれみ』は宇田鋼之介、五十嵐卓哉のSD作品であり、『セーラームーン』で育った人材がようやく最前線に躍り出た感があった。東映以外では、童夢制作、桶谷顕脚本、アミノテツロー監督による『ぶぶ チャチャ』がNHK衛星第2の放送ながら、子どもの目線を大切にした物語の温かさで好評を博した。
 一方、アニメファン向けの分野では、『エヴァ』以後の傾向を極めた作品も登場した。閉塞した宇宙船内での少年少女たちのサバイバルを描いた『無限のリヴァイアス』は、脚本の黒田洋介、監督の谷口悟朗、キャラデザの平井久司などの名とともに注目を集めた。前述の大地監督が新境地に挑んだ暗い未来SF『今、そこにいる僕 NOW AND THEN,HERE AND THERE』もまた、WOWOWという放送局の対象年齢と作品傾向を反映した1作だった。そんななか、ここにも原点回帰といえる抵抗の試みがあった。富野由悠季監督の『∀ GUNDAM』には、20年に及ぶ「ガンダム」シリーズが、重く救いのないアニメの方向性を生んでしまったことに対する自己反省が込められていた。そこでは、「名作劇場」のような温もりのある映像とともに、愚かな戦争を回避しようと努力する人々の姿が描き抜かれた。本作はシド・ミードによる、髭をつけたようなガンダムのデザインも話題となった。
 最後に、技術面での成果として『ゾイド』を挙げておきたい。タカラトミーの恐竜ロボット玩具を原作とする本作は、3DCGの映像をセル画調に変換するセルシェーダーの技術が初めて本格的に導入された作品だった。

(13.04.22)リスト修正

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