第10話 アニキっていったい誰ですか?
●大グレン団の前に、四天王の1人・流麗のアディーネが再来! ニアの危機に、シモン復活の兆し? いまだ立ち直れない主人公の葛藤、そして新ヒロイン・ニアの天真爛漫なキャラクターが描かれる。5話に続いて佐伯昭志が脚本で登板。キャラクター作画監督を『ゆめだまや奇談』の中村章子が務め、独特のタッチを加味している。感情を爆発させるヨーコの表情にも注目。
脚本/佐伯昭志|絵コンテ/木村隆一|演出/栗本宏志|キャラ作画監督/中村章子|メカ作画監督/平田雄三|原画/馬越嘉彦、馬場充子、西位輝実、杉江敏治、夏目真悟、山口智、芳垣祐介、長谷川ひとみ、西垣庄子、渡辺敬介、田中春香、小島大和、榎本花子、富田浩章、平田雄三、中村章子
取材日/2007年11月9日、2007年12月11日、2008年1月16日、2008年2月20日 | 取材場所/GAINAX | 取材/小黒祐一郎、岡本敦史 | 構成/岡本敦史
初出掲載/2008年1月18日
── 引き続き鬱展開の10話です。
今石 そうですね。続いているせいで、9話よりも鬱展開っぽい感じが強いかもしれない。グレンもラガンも全く活躍しない、という回にしたかったんですよね。あと、どこまでシモンを貶めるかという。実際はそんなに貶めてもいない気もするけど。後半ピンチに陥ったニアを助けに行って、2カットぐらいはいい格好できるんだけど(笑)、すぐ他の連中に追い抜かれて、何もできない自分……みたいな。そういうダメさ加減を出したかった。
── どんどん不甲斐なくなっていくという。
今石 10話は、1〜8話までの流れと違う感じがいちばん出るといいな、と思ってたんですよね。仲間は増えているけど、なかなかひとつになれない感じというか。個人的には、キタンのどこまでも二番手な感じがうまく出せたかな、と思います。「俺がリーダーだ!」とか言ってるわりには、ちっともリーダーらしい貫禄がつかない。
大塚 キタンのキャラが立ってくるのは、このあたりからだよね。
── 10話、11話と、続けて佐伯昭志さんが脚本を書かれてますが、これは「鬱パート担当」という事なんでしょうか?
今石 まあ、大雑把に言っちゃえばそうですけど(苦笑)。5話のあとで10話、11話と振ってますからね、ちょっとひどいですね。
大塚 ハハハ(笑)。でも、わりと本人の意向もあるんですよ。
今石 うん。佐伯君本人が「シリアスな回をやりたい」と言っていたので。9話と10話では、ロージェノムの性格が少し違うんですよ。9話では凄くダルな、怠惰なだけの性格なんだけど、10話だとアディーネを軽くいじめて喜んでるみたいな、イヤな上司っぽさが加わってきて(笑)。
── 10話は、ニアのキャラクターが前面に出てくる回でもありますね。
大塚 脚本の決定稿が出てからコンテに入る前に、内容を少し変えたんです。シナリオの方は少し先の話数まで進んでいたんですけど、そこから振り返ってみた時に、もうちょっとニアを立たせたいな、という思いがあって。9話は登場のインパクトだけだから問題なかったんだけど、10話はもっと具体的に大グレン団の連中と絡んでくる話なんですね。当初のニアは、天然キャラの要素が前面に出ていて、わりとこのパターンあるよなあ、という感じだった。
── 初めの印象では、絵に描いたような天然キャラなのかな、と思いました。
大塚 結構、そういうのって嫌われるパターンなので、ちょっとマズい気がして。「天然だけれども芯はある」という部分を立たせなければいけないと思ったので、そのあたりを10話では追加しました。例えば、アディーネに向かって強い口調で接する場面だったり。ヨーコとシモンと3人で会話を交わすシーンでも、少し台詞を変更した覚えがあります。確か、コンテの直しを入れる前に、「ここをこうしないか」と話し合って変えたのかな。
今石 そうですね。仕上がりの前に、一度相談したのかもしれない。確かにニアの「天然だけど芯はある」という部分は強調しようとしてましたね。見た目は全然違うけど、芯にはカミナと通じる何かがあるかもしれない。それで大グレン団の仲間に入れる、という流れができていった。
大塚 10話はニアの芝居について、後で疑問が生じてアフレコをやり直そうかという話もあったんだけど、無理だったんですよね。これはニア役の福井(裕佳梨)さんの芝居の問題ではなくて、ディレクションの問題なんだけど。
── それはアディーネと言い合ってる場面とかですか。
大塚 うーん、わりと全般にわたってなんですけどね。そういう意味では、みんな迷いがあったと思うんですよ。アフレコではもう少し感情を殺したパターンで録っていて、最初はそっちがOKテイクだったんです。で、戻ってきて画と合わせて聞いてみると……。
今石 なんか違うかなあ、と。
大塚 作監の中村章子も「こんな感じなんですか?」とか言っていて。ちょっと思っていたものと違うなあ、という事で「芝居を変えた方がいいんじゃないか」と相談したんです。それで11話のアフレコの時、「ニアはもう少し感情を入れた方がいいと思うんですけど」と言ったら、中島さんも「僕もその方がいいと思う」みたいな事で、現場で芝居を変えてもらったんです。10話もまた録り直しましょうと言っていたんだけど、そのあとで福井さんが喉を痛めてしまって。
今石 そうか、ちょうどその時期と重なったんだ。
大塚 11話のアフレコの時、すぐ録り直していればよかったんだけどね。ちょっと先延ばしにしてしまった。最終的には、「テイク1ではもう少し感情を入れていたはずだから、そっちで聞いてみませんか」という事で、試しに入れてみた。そしたら、それは11話の芝居とも繋がったので、差し替える事になったんです。
今石 まあ、最初に素直にやってもらった芝居の方がよかった、という事ですよね。そういう意味では、アフレコの時にもなかなかキャラが定まらなくて、試行錯誤してましたね。
大塚 福井さんもかなり手こずったと思うんですよね。最初の頃はやりづらかったと思う。
── 他のキャラクターに関しても、そういった演出的な悩みはありましたか?
今石 うーん、そうですねえ……キタンの初登場の時は、カミナと似過ぎてないか、ちょっと気になりましたけどね。でも、7話ぐらいからはわりと気にならなくなった。
大塚 ゾーシィとか。
今石 ああ、ゾーシィね(苦笑)。なかなかチンピラ風の芝居に切り替わらなくて。
大塚 油断すると二枚目になっちゃう。
今石 そう。「いやそういうキャラじゃないから! チンピラだから!」って(笑)。
真鍋 なかなか確固たるキャラを掴めなかったんだけど、確か最後に死ぬ回で「やっと掴んだ!」って言っていたような気が(笑)。「ヤザワだよ、ヤザワ!」って。
今石 ああ、言ってたね。そのキーワードが出たのは確かに最後の方だった(笑)。
── 画についてはいかがですか?
今石 10話はカット数がいちばん少ないんじゃないですか?
大塚 ああ、そうかも。
今石 200番台とかですよ。300越えしなかったんじゃないかな。おそらく7話、8話あたりで大変な事になっているだろうから、10話はちょっと抑えようみたいな空気だったと思うんですよね(笑)。たまには息抜きの回を作らないと、っていう。
── 制作的な息抜きですね。
今石 そうそう。
大塚 そのはずだったんだけど、作監の中村章子が結構粘っているので……。
今石 時間はわりとかかりましたよね。
── この回はまた作監が2人体制ですね。
今石 そうですね。キャラ作監が中村で、平田(雄三)さんがメカ作監。
大塚 またちょっと独特の画になってたよね。
今石 うん。キャラに鼻の穴が描いてあるんですよ、ちゃんと2つ。目もちょっと小さめなんですよね。
大塚 だから、9話の向田さんとは別の意味でリアルな感じ。
今石 あと、10話の見どころは夏目(真悟)君の戦闘シーンですね。BL影だけの長回しで、アディーネが雑魚ガンメン達を蹴散らしていくところ。作画枚数を抑えたはずの回だったんだけど、結構動いちゃいました(笑)。ちゃんと見せ場もできたので、よかったと思います。
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