COLUMN

第306回 アニメ『てーきゅう』の作り方(15)

 前回途中で話が逸れましたが、第7面の話の続き。で、

つまり4人の頭を並べて望遠で距離感を圧縮したカットです。これはオーディオコメンタリーでも語ったんですが「なんでこんな画作ったの?」と訊かれたら、単純に「テンポをよくするため」と言うしかないでしょう。「テンポ」って言葉は俗っぽくてあまり好きじゃないんですが、そう言った方が早くすむし、次の説明を続けやすいので今回は「テンポ」で一括します。見開き両ページで数コマ〜10数コマの画が一望できるマンガの場合はそれぞれのコマの配置やサイズ、あとキャラの向きやアングルをバラバラにするなどでテンポ感を出すんですが、1カット1カットが作り手の都合でポンポン移り変わっていく宿命にあるフィルムの場合は、一見「テンポを出す(よくする)」のが得意なジャンルに見えて、実は「テンポの出し方」が単調になりやすいのです。何しろフィルムの場合フレームはすべて同一サイズだし、各カットの尺はディレクター側が勝手に視聴者に押しつけるタイミングであり「間」ですから。マンガのように読者各自のお好みの間で補完して読み進めてもらうわけにはいきません。これが世に言う「マンガ原作をアニメ化する難しさ」の最もポピュラーな項目です(と思うのです)。小説などは画もないのでさらにお客さんの補完能力に委ねる部分が多くなるわけで、ゆえに「原作とアニメとの違い」問題が起こりやすいんでしょう。
 話はまた逸れましたが、つまり原作どおりの画と画の間に「何度も4人の頭の画に戻る」というのもある種のリズムであり、フィルムならではのテンポ感ですよね。まあそういう事でした。
 あと、黒板に書かれた文字「念力珍作戦」ってのが原作では「念力を使う」だったんですが、特になんの意味もなく自分が好きな「実写版ルパン三世 念力珍作戦」(1974年/監督・坪島孝、主演・目黒祐樹)にあやかりました。それにしても「ビラ→ビラビラ→ビア(BEER)」のダジャレつなぎはまさにルーツギャグですね。そうそう、実は最初原作読んだ時(アニメ化の依頼があった直後なので本当に最初です)、この話をラスト(第12面)にして気持ちよく終わろう、って構想もあったんですが、第1〜2面のコンテを切ってる最中、

今回は話数も内容も完全に原作とリンクするアニメを目指そう!

と思い立ったんです。前述のダジャレつなぎもそうですが、ルーツ原作はやっぱり変えるべきじゃない、たとえそれが「たかが話数の順番であっても!」と。たとえ全12本のラストが「アニメ的に最終回にふさわしくない話(主人公たちが死ぬ話)であっても、ルーツ先生が描いた順番どおりにアニメ化しよう!」と。この第7面を文字どおり7本目にもってきた時点で、もう後には引けません! 何しろ他に最終回らしい原作がないんですから。「あとは原作のままの並び順で潔く幕を引くぞ!」と覚悟完了で提出したコンテでした。さらに追記として、ラストの方のまりもに揉まれるユリの胸はモーフィング(デジタル処理)です。撮影・石野(敦夫)君ありがとう!

第8面 先輩と7月4日に生まれて

 これはウチの甥(姉貴の息子)が「なすの以外ありえんて!(やや名古屋弁)」ととにかく一推しのなすのメインの話。ルーツ先生に尋ねるまでもなく原作を読めば一目で分かるなすのの持て余し感。第2面から登場するも原作者自身が扱いあぐねてるのがよく分かってた時にきた

第8面にしてようやくなすの話!

 第5面では一見出番は多そうに見えますが、パンツを脱ぐという奇行で「え? ひょっとしてなすのも変態!?」と勘違いさせたのみでした。でもこの第8面は本当のなすのメインの話。この話のダジャレはもちろん

どら焼き→銅鑼(どら)→トラを捕(とら)える

です。まず冒頭から、フライドチキン屋やド○ルドもどきはそれぞれの某超有名店のソレとはギリギリ似ないように作画して、色を塗らなきゃなりません、当然(笑)。「私、しいたけ(がほしい)〜」の手を挙げるかなえは可愛くて大好きです。そこにユリにツッコミ

「ああー、もうっ!!」

が被るのも大好き!

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