1987年は、NHKが『アニメ三銃士』を契機に、TVアニメの製作著作に本格的に乗り出した年である。
78年の『未来少年コナン』以来、10タイトルのシリーズをオンエアしてきたNHKだが、作品に対する著作権は持たず、もっぱら制作会社から放送権のみを購入する方法をとっていた。その背景には、営利事業が禁止されている公共放送としての立場があった。それが、82年の放送法改定によって規制が緩和され、85年に関連会社・NHKエンタープライズが設立されたことで事態は変化する。間接的な形でなら製作著作を行い、版権事業にも乗り出すことが可能になったのだ。その第1弾が、TVスペシャルを経てスタートした本作『アニメ三銃士』であり、主役の1人・アラミスを男装の麗人に設定するなど、原作を大胆に翻案した内容が話題となった。
一方、民放局と各制作会社は生存競争の最中にあった。86年7月に倒産した土田プロに続き、本年は竜の子プロが窮地に立たされ、やむなくリストラを断行。新作『赤い光弾 ジリオン』はその混乱のなかで製作されたが、この時、制作拠点として発足したのがタツノコ制作分室であり、後のプロダクション・アイジーの出発点となる。
サンライズは、リアルロボットもの『機甲戦記 ドラグナー』が視聴率や玩具の売れ行きで苦戦するなか、この年初めてマンガ原作のTV作品へと進出。『CITY HUNTER』(こだま兼嗣監督)、『ミスター味っ子』(今川泰宏監督)の2作で成功し、得意分野を大きく広げるきっかけを作った。
「ジャンプ」と藤子原作のアニメは同年も優勢で、なかでもスタジオぴえろの『きまぐれ オレンジ★ロード』(小林治監督)とシンエイ動画の『エスパー魔美』(原恵一監督)は、繊細な日常描写が生かされた秀作となった。
また、前年の『あんみつ姫』『ロボタン[新]』に続き、『のらくろクン』『おらぁ グズラ だど[新]』『仮面の忍者 赤影』など、レトロマンガやモノクロ作品の復古的企画が目立った点も87年の特色となった。
そのほか、チョコレートのおまけシールを原作とした『ビックリマン』、アダルトOVAから派生した深夜アニメ『レモンエンジェル』、サラリーマン向けの蘊蓄もの『マンガ日本経済入門』など、従来にはないジャンルや時間枠を開拓する作品が登場。ブームの谷間のなかで、TVアニメの多様化は靜かに始まっていたといえる。
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