1975年は『まんが 日本昔ばなし』の放映が開始された年である。
虫プロ出身の音響監督・田代敦巳が68年に設立したグループ・タックが、初めて制作を手がけたTVシリーズである。童話作家・川内彩友美の愛企画センターが企画・製作、作詞家である父・川内康範が監修を担当。当初は3ヶ月のみの放映だったが、大変な反響を呼んだため、翌年より第2期がスタート。足かけ20年に及ぶ長寿番組となった。本作は、市原悦子、常田富士男の2人だけによるナレーションが味わいを残す一方、演出、作画、美術の手法が1話ごとに異なる点も特色だった。これは業界再編の結果、東映動画、虫プロ出身の多数の人材が本作に流れ込んだことが影響している。また、キー局の毎日放送は、ミニアニメ『キリンものしりシリーズ』を約10年間製作しており、同作での経験と人脈が第3の流れとして加わっている点も忘れてはならないだろう。
高度経済成長の終焉とともに、豊かな自然への回帰願望、歴史や文化を見つめ直す欲求などが、日本人の心をとらえていた。『ハイジ』『昔ばなし』のヒットは、そんな世相と響き合ったものともいえる。そして本年から数年間は、和洋とり混ぜた文芸アニメが花盛りとなっていく。斉藤惇夫の児童文学を原作とした東京ムービーの『ガンバ の冒険』もそのひとつ。虫プロ出身の出崎統、東映動画出身の芝山努、椛島義夫など、ここでも両プロの才能が融合し傑作となった。東映動画は『一休さん』で成功、4年にわたるロングランを記録する。ズイヨー映像は、6月に日本アニメーションへと独立・改組しつつ、『フランダースの犬』で安定した人気を持続した。
竜の子プロとサンライズ・スタジオが、重要な2作を発表したのもこの年である。竜の子プロは、前年に大量の退職者を出すなど騒然とした時期をくぐり抜けたが、本年には新規採用を加えて再出発。秋には『タイム ボカン』を製作し、長期シリーズの基盤を築いた。サンライズ・スタジオは、初の巨大ロボットもの『勇者ライディーン』を制作。東北新社からの下請けだが、同社の看板ジャンルの処女作となった点で意義深い。CDは富野喜幸が務め、美形キャラの走りともなる敵役シャーキンを活躍させるなど健闘するものの、視聴率不振のため半年で降板。後任は『巨人の星』の長浜忠夫が務め、ケレン味ある作劇でロボットアニメの新たな可能性を示した。
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