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第12回 1974年(昭和49年)TVアニメの転機をなす2大作品が登場

1974年TVアニメリスト

 1974年は、TVアニメの転機ともなる『アルプスの少女ハイジ』『宇宙戦艦 ヤマト』が放映開始された年である。
 『アルプスの少女ハイジ』は『ムーミン』以来のカルピス名作シリーズ第5作だが、それまでのファンタジー路線とは趣を異にしていた。演出の高畑勲は、作画監督の小田部羊一、画面構成の宮崎駿らととに、登場人物の日々の生活を丹念に描写する姿勢を貫いた。そうして得られた物語空間やキャラクターのリアリティの上にこそ、初めて生き生きとした人間たちのドラマを、説得力を持って語り得ると信じたからである。本作は、子どもを持つ母親層から良質なアニメとして圧倒的な支持を受け、これ以後、名作文学を原作とするアニメ企画が続出するきっかけを作った。また、TVアニメに初めて本格的なレイアウト・システムを導入した点でも重要である。
 『宇宙戦艦 ヤマト』は、ストーリー、ビジュアル、音響などあらゆる面で、日本のSFアニメに新地平を拓く作品となった。そこには、『ハイジ』とはまったく別の角度から、極めて精緻に追求されたリアリティへの挑戦があった。重厚な宇宙空間での戦闘を描くための、描きこまれたメカニック表現、武器発射までの細かなプロセス、それらを支える丁寧な作画と音響効果。そして、悲壮感とロマンに満ちた青春群像劇の魅力。本作の完成には、プロデューサーの西崎義展、監督とメカ&キャラデザインを手がけた松本零士、チーフディレクターの石黒昇、効果の柏原満、音響監督の田代敦巳、音楽の宮川泰など幾多の才能の結集が不可欠であった。
 2つの作品は、片や東映動画、片や虫プロの流れを継ぐ人材が、時満ちてその力を存分に発揮した成果ととらえることができる。だが、『ヤマト』は『ハイジ』の裏番組という皮肉な関係にあった。『ヤマト』は本放映では視聴率的に敗退。だが、再放映で不動の人気を獲得、アニメブームの主役として最前線に立つことになる。
 74年は、東映動画にとっても転機となった年である。今田智憲が新社長に就任、労使紛争にようやく解決の兆しが見え始めた。3体が変形合体する巨大ロボットもの『ゲッター ロボ』、軽いエロチシズムを加味した魔女っ子もの『魔女っ子メグちゃん』などが成功する一方、キャラクタービジネスやデジタル制作の可能性を模索し始めたのも本年で、やがて同社がブーム期以降に飛躍発展する礎となった点でも大きな意味があった。

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(12.10.01)リスト修正