1973年は、日本にTVアニメ時代を切り拓いた最大の功労者・虫プロダクションが倒産した年である。
71年、手塚治虫が社長を辞任し、川畑栄一のもとで新体制となった同社だが、慢性的な赤字は改善されていなかった。TV作品の受注本数は減少し、本年に入ると取引状況はさらに悪化。8月22日、系列会社・虫プロ商事が倒産したのに続き、11月5日、虫プロ本体もまた3億5000万円の負債とともにその命脈を絶たれてしまった。
最後の作品『ワンサくん』は久々の手塚原作もの。和製『わんわん物語』ともいえる本作は、毎回ミュージカルの見せ場が用意され、有終の美を飾る仕上がりとなった。その音楽パートは譜面が読めるアニメーター・石黒昇が担当。ほかにも、西崎義展(プロデューサー)、山本暎一(監督)、藤川桂介(脚本)、宮川泰(音楽)などメインスタッフの多くは、そのチームを維持したまま、翌年、『宇宙戦艦 ヤマト』を生み出すことになる。
一方、順調に見える老舗各社も、不安要素を内包していた。東京ムービーは、2年ぶりに再燃したスポ根ものの追い風もあり、秋には『侍 ジャイアンツ』など週5本を同時製作。だが翌年には1本へと激減し、経営危機に直面してしまう。竜の子プロも『ガッチャマン』で安定した人気を維持するものの、水面下では労使問題が深刻化しつつあった。前年末より業務を再開した東映動画は、『キューティー ハニー』『ドロロン えん魔くん』を加えていよいよ“永井豪の時代”を確たるものにするが、労組との和解交渉は決着を見ていなかった。
『鉄腕アトム』から10年。72〜74年は、アニメ界が大きく揺らいだ時期でもあった。各社が抱えてきた経営の歪みはついに破綻をきたし、倒産や労働争議はスタッフを拡散させ、多くの独立プロを生む引き金となった。虫プロからは、72年にサンライズ・スタジオ(後のサンライズ)とマッドハウスが発足。本年にはそれぞれ、創映社の『0テスター』、東京ムービーの『エースをねらえ!』に参加し、本格的な活動を開始した。瑞鷹エンタープライズもまた、東映動画と虫プロから人材を集めて72年に制作部門・ズイヨー映像(後の日本アニメーション)を設立。本年の『山ねずみ ロッキーチャック』を経て、翌年には『アルプスの少女ハイジ』へと到達するのである。
73年は、現在へとつながる業界の再編成が行われた点で、重要な“始まり”の年でもあったのだ。
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(12.10.01)リスト修正