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第8回 1970年(昭和45年)青春スポーツものの金字塔 学生運動の熱気背景にアニメ化される

1970年TVアニメリスト

 1970年は、当時の学生たちのシンボルともいえるマンガ作品『あしたのジョー』がアニメ化された年である。
 原作は高森朝雄(梶原一騎)、ちばてつやの2人。掲載誌である講談社の「週刊少年マガジン」はこの時期、学生運動に身を投じる若者層を中心に、オピニオンリーダー誌として絶大な支持を集めるまでになっていた。そして『ジョー』というマンガもまた、彼らの活動の高まりに呼応するように人気を獲得、その存在は一種のバイブルと化していたのである。3月24日には、壮絶な闘いの末に世を去った劇中の宿敵・力石徹の告別式が講談社社屋にて執り行われた。また、3月31日に発生したよど号ハイジャック事件では、犯人グループが「われわれは明日のジョーである」との声明を発表。虫プロによるアニメ版がスタートしたのは、まさにそんな渦中の4月1日だった。少年院育ちの反体制的な主人公・矢吹丈の生き様、ボクシングというスポーツのハングリーなイメージが、政治の季節を生きる学生たちの精神性にフィットしたのかもしれない。それは初監督としてアニメ版に臨んだ弱冠25歳の出崎統にとっても同様だった。丈への強い共感をこめて撮られた本作は、作画監督の杉野昭夫、荒木伸吾、金山明博らの感性とも響き合い、一級の青春映画としてアニメ史にその名を刻むのである。
 この年は他にも梶原原作のアニメ化が相次いだ。4月には初の本格的サッカーもの『赤き血のイレブン』が、10月には実在のキックボクサー・沢村忠の活躍を描いた『キックの鬼』がそれぞれ登場。『タイガー マスク』『巨人の星』も継続中のなか、同時に5タイトルが並ぶ状況は、翌年の3月まで続くことになる。
 10月には、田河水泡の『のらくろ』をTCJ動画センターがアニメ化。68年の明治100年節に際し、戦前・戦後の人気小説やマンガが続々と復刻されたが、同作もその流れで企画が実現した。戦後25年という時の経過を示す現象でもあり、この懐古ブームは、翌年以降も『決断』『赤胴鈴之助』などの作品につながっていく。
 一方、竜の子プロは新たな方向性を打ち出す2作を発表。『昆虫物語 みなしご ハッチ』はメルヘンものの意欲作、生き別れの母を探す主人公の旅をハードに描き、ファミリー層の心を掴んだ。『いなかっぺ大将』は、川崎のぼる作品のアニメ化。同社初の外部原作だが、スポ根+コメディという路線が新機軸として成功した。

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