こんにちは、ご無沙汰しております。アニメの演出をやっている本郷です。気づくと2012年も5ヶ月が過ぎ、月日の経つ速度の早さに驚く今日この頃です。今回はアニメスタイル編集部から機会をいただき『赤胴鈴之助』を僕の視点から色々語ってみたいと思います。
●赤胴鈴之助の基礎知識
最初に原作であるマンガ「赤胴鈴之助」は福井英一によって生み出されました。
1921年生まれの福井は政岡憲三のもとでアニメーターとして『すて猫トラちゃん』『王様のしっぽ』などに参加した後、1941年に漫画家としての活動を始め、冒険王で「イガグリくん」が大ヒットを飛ばします。手塚治虫と並ぶ人気漫画家になっていた福井が1954年に少年画報8月号から連載を開始したのが、「赤胴鈴之助」だったのです。ところが信じられない事が起こります。第2回の下書きが出来たところで福井が過労のために急死してしまったのです。急遽、1953年にデビューした新人漫画家の武内つなよしに執筆の依頼があり、武内が「赤胴鈴之助」の育ての親となるのです(当時の漫画雑誌は月刊誌が主流で週刊漫画雑誌はまだありませんでした)。
内容は日本一の剣士を目指す赤胴鈴之助が江戸で名高い北辰一刀流、千葉周作の道場に入門し、修行の日々を送りながら、父の残した赤胴真空切りを完成させようとします。同時に兄弟子の竜巻雷之進らとともに幕府転覆を狙う鬼面党が次々と放つ敵を倒していく勧善懲悪の痛快時代劇マンガで、マンガとしてここまで完成度が高いものはなかったので、瞬く間に大人気となり、子供たちの支持を集めたのでした。その人気を受けて、1957年1月7日よりラジオ東京(現TBS)においてラジオドラマ化され、後にアニメの冒頭にも使われる「ちょこざいな小僧め! 名を名乗れ」「赤胴鈴之助だ!」というフレーズから始まる主題歌が世に出ることになります。さらに同年の5月21日には映画も公開され、トータル全9作の人気作になります。そして10月からはKRテレビ(現TBS)でTVドラマが始まります。メディアミックスなんて言葉がなかった時代の「赤胴鈴之助」の大人気ぶりがわかります。1959年まで、ラジオドラマ、TVドラマは続き、単行本も22巻まで出版たところで、約5年に渡って続いた「赤胴鈴之助」のブームはようやく沈静化していきます。TVアニメの世界では、1963年が『鉄腕アトム』のスタートですので、世の子供たちの間にアニメブームが来る以前のお話です。
僕は1959年生まれなのでその当時の少年たちの『赤胴鈴之助』の熱狂ぶりは知るよしもないのですが、それでも物心つく頃には赤胴鈴之助というヒーローがいる事は知っていましたし、マンガなら「伊賀の影丸」、アニメなら『風のフジ丸』、特撮なら「仮面の忍者赤影」など時代劇ヒーローも多数存在していて、小学校低学年の頃、男の子の間では、チャンバラごっこは比較的ポピュラーな遊びだったと思います。