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DVD-BOX発売記念 アニメ『赤胴鈴之助』の話 文・本郷みつる

●アニメ版『赤胴鈴之助』

 そして1972年4月5日、ブームから15年の時を経てフジテレビ系列での放映が開始されます。当時中学1年生だった自分の感覚としては「名前だけ知っている古臭い内容のアニメが始まるなあ〜」くらいのものでした。一度ブームが去ってからのアニメ化も今では珍しくありませんが、大ヒットしたヒーローものリバイバルの先駆けかもしれません。

僕のアニメ『赤胴鈴之助』に対する当時の期待度は低かったのですが、放送が始まり回が進むにつれ、惹きつけられていきました。はっきり言いましょう。「面白い」のです。自分も実作業者として今でも「面白いアニメ」を作りたいと七転八倒してみたりしていますが、なかなか簡単には面白いアニメにはなりません。そんな僕が言うのです。間違いなく、確かに『赤胴鈴之助』は面白いアニメです。

 お話に関しては4クール、52本の構成が実にうまくいっています。原作マンガのエッセンスを生かしつつ、シリーズ通しての敵・鬼面党とそれに対する正義の側、若くて血気さかんでおっちょっこちょいの赤胴鈴之助、兄弟子だが鈴之助と対立し、後に親友となる竜巻雷之進、そして天才剣士の柳生市太郎たちがライバルとして競いあいながら人間として成長していく姿を描きつつ、オーソドックスな冒険活劇として成功しています。「定番」なんて言葉を使いたくなりますが、ここまで普通に盛り上がっていく時代劇アニメはありそうでいて他に例がありません。

 声優は赤胴鈴之助役が山本圭子、竜巻雷之進役が兼本新吾、柳生市太郎役が井上真樹夫で、主人公以外は大ヒットしたアニメ『巨人の星』の左門、花形役が脇を固めるという配役なのです。現在だと同じ制作会社だったらこうした配役はしないかもしれませんが、当時のムービー作品には繰り返し参加する役者さんが多かったのですね。シリーズが作られていく中で必要な作品に対する役者たちの理解や互いの呼吸、所謂「ノリ」が最初からあるので、作品の声の安定感がある、という利点があるのです。他の声優もさゆり役の小鳩くるみ、大助役の桂玲子、波野十蔵役の永井一郎、千葉周作/ナレーターの千葉耕市、鬼面党首領・銀髪鬼役の小林清志と適材適所なキャスティングに大納得です。

 こういった戦いを主題にした作品はともすれば毎回の内容が似てしまいマンネリに陥りがちなのですが、個性的な敵(ざっとあげると、怪人一本足、闇の三兄弟、骸骨鬼、青銅鬼、鬼卍、鬼ザメ、剣鬼、銀髪鬼……どうです、どいつも強いんですよ)と様々な事件、物語中盤は「真空切り」を完成させる旅に少年・波野大助とともに1クール近くロードムービーになったりして、脚本の妙を感じます。そして良質な子供向けでありつつ、鈴之助を見守る大人のキャラクター、道場主の千葉周作や大助の父親、傘張りの浪人波野十蔵の存在感が光っています。元の原作漫画が面白いところにさらにうまく換骨奪胎して52本、見る者をぐいぐい引っ張ってあきさせません。