マッドハウス版『HUNTER×HUNTER』(以下、マッド版『H×H』と略す)が最終回を迎えた。148話「コレマデ×ト×コレカラ」は長期シリーズにふさわしい、堂々としたラストエピソードだった。
マッド版『H×H』は、冨樫義博の同名マンガ2度目のTVアニメ化である。このシリーズは、初期から原作とニュアンスが違っていた。感覚的なことなので言葉にはしづらいが、原作はシャープであり、乾いた作品だ。マッド版『H×H』はマイルドで口あたりがいい。
設定や物語に大きく手が加えられているわけではない。どんな配役にするか、どんなテンポで話を進めるか、どんな画作りにするか、そういったことの積み重ねで、マッド版『H×H』のテイストができあがっていた。そのテイストをつくっているのはプロデュースの采配なのだろうか、監督のディレクションなのだろうか。おそらくは両方なのだろう。キャラクターデザイン・総作画監督を務めたのは「WEBアニメスタイル」でもお馴染みの吉松孝博。彼の画風がマッド版『H×H』のテイストに与えた影響も大きい。
僕は最初の頃、原作とのテイストの違いが気になっていたが、やがてこれが今回のアニメシリーズなのだと納得した。放映が進むにつれてスタッフも慣れてきたのだろう。特に「グリードアイランド編」は物語の展開がスピーディで、キャラクターも活き活きしており、楽しんで視聴していた。
マッド版『H×H』がスタートしたとき、すでに原作は「キメラ=アント編」の後半に突入していた。原作の「キメラ=アント編」は相当に刺激の強い内容である。「放映が進んだら、これをTVでやるの? 大丈夫?」と、他人事ながら心配に思っていた。その結果がどうなったかは、読者諸君もご存知のとおりだ。作り手たちは「キメラ=アント編」を、きっちりと映像化したのだ。原作を壊さず、しかし、過激にもなりすぎない。TVでオンエアできるものとして仕上げていた。見事な映像化だった。
今回のTVシリーズが、もっと原作に近いテイストで作られていたなら、「キメラ=アント編」をオンエアすることはできなかったかもしれない。「キメラ=アント編」まで制作することを見越して、マイルドなテイストで作り始めたわけではないだろうが、スタッフが目指した方向性は決して間違っていなかった。
135話「コノヒ×ト×コノシュンカン」は、死にゆくメルエムとコムギの関係を描いたエピソードであり、「キメラ=アント編」のクライマックスだった。マッド版『H×H』だからこそ、生まれた傑作であったと思う。
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