COLUMN

第855回 『(劇)ジョー2』の魅力(5)

 前回からの続き。

0:43:04~電車通過後、紀子の台詞、

私、付いて行けそうもない……

劇場用・藤田淑子版紀子の方がTV版より、精神的な決別感が強く出ていると思います! が、やや大人っぽい? 下町三つ編み娘には、似つかわしくない艶っぽさが……。
0:43:29~金竜飛戦。本当に「それで終わり」ですか!? でも、これだけの端役に追いやられた “劇場版・金竜飛”役に「“舞々(チョムチョム)”でジョーを苦しめます!」的な意気込みを語ったCV.古川登志夫のコメント(劇場パンフレットより)は微笑ましいですね。
0:43:57~ここで“金竜飛の過去インサート”は初見のお客には辛かろう、とも思うくらい、「?」な編集。過酷な減量話を丸々カットしたこと以上に謎。でも、「分かんないなら分かんなくっていいよ!」って、出﨑統監督なら仰るでしょう。はい、TVシリーズで2話分使った金竜飛戦も、出﨑監督の手に掛かれば締めて(看板から入れても)37秒!
0:44:05~ここからのテレビ関東によるパーティー、TVシリーズでは金竜飛戦の前(減量前)に入るシーンでした。“矢吹丈(丹下ジム)・連戦連勝祝賀会”の看板のカットから、テレ関・大橋部長「強敵・韓国の金竜飛選手を厳しい減量に耐え、第6ラウンドKO勝ち!」のスピーチを重ねて無理矢理“金竜飛戦後の祝勝パーティー”に置き換えることに成功(?)しています。
0:44:59~この窓に映り込むジョーのド寄りなめ、ホセ・メンドーサ。前々カットの跳ねる鯉からO.L(オーバーラップ)して窓際に無言で立つ葉子とジョー~の流れでホセを背後に感じるジョー! ここ一連の呼吸が実に良い!! 逆算してTVシリーズ~己の体重から話を逸らそうとするジョーの「今、池の鯉が跳ねやがった」が邪魔に感じるくらい。実はそれ位『ジョー2』に関してはTVより、劇場版の方をより繰り返し観ている板垣です。
0:45:16~サングラスを外して再度こちら(ジョー)を見るホセ。ダンディでカッコ良いカット。なのですが、カット尻の3回T.Uが、多分“目をセンター”にしてT.Uを繰り返したつもりなのでしょう。ところがコレ、

“おでこにT.U”して見える!!(※TVフレーム4:3でも!)

 と。もう少しラストフレームを下げる(てことは目を上へ、むしろ“鼻”に寄るようにする)方が“目にT.U”するように見えるものです。その昔、自分がテレコム(・アニメーションフィルム)時代に『SUPER MAN』(1996)で“死刑囚の顔にT.Uする”という、コレと同様のカットを描きました。そのラッシュ・チェックの際、(ジブリ作品でもご活躍の)田中敦子先輩から「板垣君! あそこのT.U、おでこに向かってる!」と指摘されたのを思い出します。そう、“画で映画を作る”ということは考えてる以上に微妙な映像センスが必要なモノなのです。
0:45:54~段平によるデタラメ英語も、劇場版の方が要領よく纏っています! それと、こんなコミカルなシーンなのに段平背中……しかもピンボケなめ、アオリ・入射光とか妙な迫力で、個人的に可笑しい。
0:46:34~ジョーの肩を握るホセ、横3回PAN。横3回PAN自体は好きではないけど、この緊張感漂うムード・BGMにスピード感のある3回PANはカッコ良い!! 一種、音楽的なリズム感と映像のそれとの不一致が面白く感じる俺です。
0:46:43~ホセ・メンドーサの「GOOD LUCK……」。劇場版ホセの岡田真澄バージョンは粘っこく「グーッド・ラック……」、TV版は華麗に「グ―(ッ)・ラー(ッ)」。どっちも良い! 言い終わってのアオリ・付けPANも!
0:47:02~前カットでジョーのド寄りから既に丹下ジム内、バサバサッ置かれる礼服(段平の貸衣装)。このシーン繋ぎも軽快。
0:47:37~ここで漸く丹下ジム外観。BGMも相まって、“一旦リセット”感が結構好き。つまり、ホセが両肩握り、それを持ったままジムにて“痣”発見までを一塊にしたかったのかと。
0:48:19~ここの台詞回し最高!

へ(は)っ……、俺だったら肩に痣なんて気取った真似はしねぇ。
奴の鼻っ先へでっかい青い痣をプレゼントしただろうぜ……!

このニヒルで軽やかな言い回し、ルパン三世役は山田康雄以外があり得ても、ジョー役は本当にあおい輝彦以外に考えられません!
0:49:13~???ここ、TV版の“止め+ハーモニー処理”が数コマ残ってるのは、ビデオレンタルの昔から気になって、気になって。
0:49:24~ミラーに映るTV屋さんとジョー。後部座席シートの実線が、“合成ミス(動画・仕上げ用語)”です、多分。もちろん、出﨑監督も俺も気にしません!!
0:49:29~この“逆光シルエット+全面透過光の海”、1981年当時の出﨑監督の“映像観”が分かるカットの一つかと。

 あれ? これでまだ半分行ってない!? ダメですね、好き過ぎる作品の分解は! 次、頑張ります(汗)。

 ってとこで、新作のオープニング・コンテ作業に戻ります! また色々敬称略で、すみません。