COLUMN

第937回 『沖ツラ』と『キミ越え』~続々

 『沖ツラ』9話~10話、“肝だめし”の件。ここはまず、スタッフ間では“肝だめしの行われる場所はどこか?”が問題になっていました。実は、前述の“怪談”は具志川公民館——具志川地区コミュニティ共用施設という実在する場所。で、肝だめしを開催する森は創作、と原作から読み取れました。つまり、公民館と繋がった森は存在しない訳です。それをコンテ発注段階で公民館に実在しない森をくっ付ける話で進んでいてビックリ! すぐさまスタッフらに「ちょっと待って!」をかけて、

そんなの公民館で怪談をした後、“場所をポンと森の前に飛ばす”だけでいいでしょ!

と。コンテ(編集)で工夫して、巧く繋げれば余計な噓をつかなくて済みますから。実在の場所はできるだけデリケートに扱わないと駄目だと思いました。
 これに似た現場判断のズレは本当によくあります。森の描き方についても、なぜか全部隅々まで見える背景が発注されてたりして「い、いや! 先が見えない怖さを表現しなきゃ肝試しになんないでしょ! ちゃんと原図に“闇”を指定してよ!」とか。
 前作『いせれべ』以来、総監督という立ち位置でやや俯瞰で見るはずが、こういうズレ多発の結果、板垣指示の直しが多くなり、次第に演出・作画両方を修正。よって、

普段の監督業か、それ以上にグッタリ疲れました『沖ツラ』も!

そういう意味で、『キミ越え』の方は木村(博美)さんと共同監督でバランスは良かったと思います。
 『キミ越え』における木村監督との作業分担はと言うと、

脚本・コンテチェック・編集・音響・作監が板垣監督担当、キャラクターデザイン・総作監・コンテ清書・その他ビジュアルコーディネートが木村監督担当!

ということでやっていました。そして、一部で話題になっていた、

「各話演出クレジットがない!」「演出は誰!?」について!

です。実は『いせれべ』以来進めてきた板垣による“スタッフ編成改革”を、今作『キミ越え』ではまたさらに推し進めて「各話演出をなくそう!」と思い立ちました。理由は「まずアニメーターに演出処理を覚えてもらおう」ということでした。演出処理とは撮影指示やタイムシートのチェック、そして音響に必要な台詞・SEボールドの付け方など、いわゆる“コンテの後処理”のこと。演出業の中では雑務に値する部分です。
 それは、社内のアニメーターからしょっちゅう「撮影指定の書き方を知らない」だ「タイムシート・タイミングの付け方が分からない」だ言われて、俺は「10年前から何度も説明したし教えたはずでしょ」と返していました。結局、「後でそれらを演出の人がチェックしてくれるから」と高を括っている以上は俺がいくら教えても憶える気がないし、実践する気もないのでしょう、と。
 じゃあってことで、

「今作は演出置かないから貴方(アニメーター)のほうで全体見て!」が“作画チーフ”!

という役職になります。フィルム1話分全体を見る視点がないと、カット割りの意図からのレイアウトだったり、台詞の間尺の取り方、BG引きスピードとかは身に付きませんから。もちろん、俺の方でそれらを改めて指導しつつです。
 なので『キミ越え』の各話演出はと訊かれれば“作画チーフ”が半分と答えます。そして「じゃあ、もう半分」は、

板垣・木村両監督以下、“監督助手”チーム!

になります。そのやり方についてはまた次回!