改めて言いますが、俺の理想は“出﨑コンテ”です!
ただ、ファンの方々はご存知のとおり、出﨑統監督の手になる画コンテは“大変ラフ”で、イメージこそ伝わるのですが、細かいディティールは演出・作画にお任せというスタイル(よーく見ると実はそうでもないのですが)のため、画を作るスタッフ側からすると好き嫌いが別れるようです。自分が業界に入った際、出﨑コンテに触れたことがある先輩方からは賛否両論耳にしました。テレコム(・アニメーションフィルム)に入社した頃、出﨑信者であることをカミングアウトすると、ある先輩からは「出﨑さんのコンテ、何描いてあるのか分かんない(笑)」と。他に「散々(スケジュールを)引っ張って、コンテ上げたら助監督(演出)に任せて消えていった」とか「芸術家気取りで、嫌い」といった意見も。自分が入社する前は『劇場版 SPACE ADVENTUREコブラ』や『マイティ・オーボッツ』『NEMO』パイロットフィルムなど、出﨑監督とテレコムは結構組んでいて、その時の印象が良くなかったのでしょう。ところが、フリーになってあちこちの現場で仕事するようになった自分が聞いた出﨑評は、「統さんのコンテ大好き! あの画が良いんだよ!」「作画スケジュールは崩壊するけど、出﨑(監督)のコンテは面白い!」と良いものばかりで、嬉しかったのを憶えています。
批評・評価は色々あっていいのですが、個人的にコンテに関して思うことは、第一に、
1コマ1コマの画に時間を掛けてはいけない! むしろ誤解を恐れずに言うと本来はスピードある筆致“雑”に描くべき!
と思っています。これを言うと“作画の際、レイアウトの下敷きになる丁寧な清書が成されたものが良いコンテ!”と言う価値観で見る人からは「とんでもない!」と叱られて、出﨑監督のコンテも否定されるのでしょう。でもこれ、作画の直し(現在『沖ツラ』作監作業中の俺……)にも言えるのですが、
同じ下手な原画なら、ザックリ速い筆致で描かれている方が、遅く神経質なそれより直しやすい!
のです。それと、これも以前話題にしたと思うの大塚(康生)さんの名言ですが、
3秒の動きは3秒で描け! 3秒はオーバーでも、せめて3時間で描くぐらいじゃないと! 3日も掛けたら(3秒の動きとは)違うモノになっちゃうから!
これ、“雑コンテ”と同じ理屈かと。つまり、
シーンが流れるのと同じスピード感でにコンテを切る(カットを割る)!
ということ。故に繰り返しますが、コンテの画は丁寧に描くべきではない!——です。作曲に例えるなら、丁寧な丁寧なフォント風音符を、ゆっくり時間をかけて五線紙に描き込んだから名曲になる訳ではないですから。そう。出﨑コンテの独特のリズム感・テンポ感はその辺に起因しているのです。だからこそ監督が全話コンテを切る必要があるのでしょう。
後、清書コンテを望む作画方々、…そもそも、自らの実力不足を棚に上げて、コンテの画ヅラの力を借りて原画を描こうとしている時点で、アニメーターとしてどうかと思います(本音)。が、そうは言っても慢性的人材不足な昨今のアニメ業界では、コンテの清書はほどほどに必要なのでしょうね。
って訳で、仕事に戻る時間です!