COLUMN

第856回 『(劇)ジョー2』の魅力(6)

 前回からの続き。もう少々お付き合いください。

0:49:48~あ、色パカ! すみません、職業病です。
0:50:08~TVシリーズではこのジョーの視線の先に、ホセにノされたスパーリング・パートナーが横たわっていました。その部分をばっさりカットしてしまった故、戦慄の汗だけ残ってしまったのでしょう。TV“総集編”映画の面白さだと、俺は認識しています。
0:50:33~ポスターでかっ! と、ポスターとジョーの顔との対比が気になる……。
0:50:59~この目を見開いた“怒り”の表情。これも杉野(昭夫)作監が冴えます。今の若いアニメーターにこの心情表現ができる人、何人いるでしょうか? 大概“怒り=眉を吊り上げて眉間にシワ、歯をくいしばる”などの定型で描かれてきます。
0:51:21~TVシリーズ「見損なった~云々」の台詞を「教えてもらおうか! ホセは今どこにいるんだい?」と変えて、即“乗馬シーン”に繋ぐ手際の良さたるや!
0:51:40~で、ここからの乗馬シーンは原作にないオリジナル・シーン。学生時代、アルバイトして買った廉価版VHS全10巻(全47話)でTVシリーズ『ジョー2』を同級生・友人らに布教したところ、シリーズとおしての良いシーンが話題になり、俺が説明すると「乗馬って、原作にないの?」「え!? 須賀清って原作に出ないの!?」など、その数々の名シーン・名台詞が“アニメ版のオリジナル”であることに驚かれました! 逆に原作にある葉子がドヤ街住人に絡まれたり、ジョーと葉子がボーリング・デートするシーンなどはアニメでカットされています。ここまで色々手を加え、所々カットしても、原作の根底が活かされていればファンの支持を受ける名作アニメに成り得るのです!
因みに我々世代が生まれた頃(1974年)、原作「ジョー」は連載終了しておりました。俺が原作に詳しいのは、連載終了10年後(位?)に発刊された“KCスペシャル全13集版”を購読・愛読済みだったためです。
0:52:02~出﨑監督の手に掛かればジョーは突如、馬に乗れるのです!
0:52:05~あ、一番奥に須賀清(消し損ね)発見!
0:52:21~ “止め+ハーモニー” 連続で、駆け出す馬の力強さを表現することに成功しています。
0:52:59~TV版ではこの後、分割画面下段に須賀清がフレームINしてくるのですが、劇場版ではもちろんカット。
0:53:07~ここで分割画面上段を黒コマにすることで、“帽子が落ちた”を表現! ただただ巧い! 自分、分割画面はあまり好きではないのですが、出﨑監督のはこういうトリックがあるので納得させられるんです。
0:54:25~はい、画面左に見切れてる肩、須賀清(消し損ね)。
0:54:29~ここからのハワイアン・ムードの出し方、TVサイズな感じの省力感は否めないですが、部分の点描と音楽のテンポ感で“葉子の説明”を聴かせます。
0:55:18~“ピン送り”が戻る(ジョーが一旦ボケてまたピントが合う)のは何故?
0:55:55~「……ある訳がねえ」のジョーの表情、あおい輝彦の声——ゾクッとしますよね。初見の時、この辺りから既に「ジョー、ヤバい……」って。
0:56:06~ここからの“海辺のドライブ”シーンも名場面で、原作にありません。CGでは表現できない手描きのメカ・アクションの迫力がこれ!
0:57:05~葉子とジョーの笑い。BGMも含めて大人なシーン。これが描けていれば、原作のボーリングのシーンとかは不要です。
0:57:10~海の表現『ガンバ~』みたい。
0:57:17~ここが有名(?)な“唯一、劇場版にしかないシーン”! 原作のパンチドランカー故の蛇行するジョーの足跡(もう少し大きめに蛇行してて欲しかった)。TV版の時系列だと、パンチドランカー症状に気付く葉子が早過ぎる、とのことでカットらしいです。だとすると、シリーズ後半EDの止め+ハーモニー1枚に集約した? いや、でも服装違うしな……。
0:58:40~ホセ・メンドーサ対サム・イアウケア戦、ゴング!
0:59:19~カウントいきなり「ナイン!……テン!」早っ!
0:59:22~てことで試合終了! 尺40秒ちょい!
0:59:33~時代的に当たり前ですが、繰り返し(リピート)モブは気になっちゃいますね、『(風の谷の)ナウシカ』のラストと言い……。
1:00:16~前カットの1歩から、しれっとここへ飛ばす度胸。
1:01:17~杉野作監の“目を見開き、口元を結び且つ浮かべる笑み”! なぜか能動的なニヒリズムを感じます。だからまた、「ジョー、ヤバいっ……!」。
1:01:21~身体大の字に両手を突き上げ「シ―・ユー・アゲインッ!!」カッコ良し!!
1:01:25~このジョーの顔も「ヤバい!」死を恐れないどころか“笑って死に向かって行く”感が……。
1:01:34~リアルタイム1981年7月4日公開初日に観た人は、ここからが“新作”として楽しめた訳ですね。こうして改めて観ると、残り50分「半分(後半)新作」を興行的なマストに据えていたのは間違いないんじゃないかと? そりゃ“減量~金竜飛の過去”とかカットせざるを得ません。いや、この映画、ホセ戦の尺に意味があるんです! ホセ戦は25分弱に纏められている本作。例えば映画『ROCKY』的な計算だと、10分にホセ戦を纏められるでしょう。その上で金竜飛に尺を割くとか~と意見する方もいらっしゃるかも知れませんが、それだと、「急ぎ足で全部舐めただけの映画」になります(断言)! でもこの劇場版は、前半はTVのダイジェストと割り切って、後半新作でホセ戦をメインにすることで「ジョーを描く映画」にすることに成功しているのだと思います。即ち、カーロス戦も“ボクシング・テクニックの説明なんて不要”なんです。ボクシングを描く前に、ジョーを描くことのほうが出﨑監督の目的なんですから。ラストのホセ戦は観客が疲れるくらいの“長さ”が必須でしょうし(その辺りの話は次回以降)。

 てとこで、次も頑張ります(汗)。そして、敬称略すみません。