COLUMN

第853回 『(劇)ジョー2』の魅力(3)

 前回からの続き。
0:14:20~タイガー尾崎戦T.K.O負けから、ポンとタクシーで引き上げるジョーの寄り……の窓ガラスに映る雨・夜景へ。そこにジョーのモノローグを被せて繋ぐテンポの良さ。「所詮ただのTVシリーズの編集ですから~」的に拗ねるのではなく、

TVシリーズの無数にあるカットの山から“新しい映画の論法”を開闢しよう!

という強い意思を、出﨑監督の総集編映画からは感じます!
0:14:39~1981年はタクシー初乗り¥380でした。
0:14:51~ほら。もうタクシー降りて河原に座ってるでしょ、ジョー。
0:14:59~「矢吹よ、どうしたい?」「……どうもしねえさ」「ふん、そうかい。(ほい)じゃあな……」
 残念ながら、劇場版での力石の台詞はここで終わり。本当に何しに現れたんだ、力石!? とも思いますが、ジョーにとっての“力石の位置”みたいなのが良く出ているシーンとも言えます。
0:15:16~リングライトを浴びて佇む力石のT.B(トラック・バック)。その後、河原のジョーも立ち上がる。なぜかカッコいい。理屈を超えた説得力が出﨑アニメの真骨頂!
0:16:19~「そんなボクサーが、1人——」と葉子ド寄りからグウ~ンとカメラ回り込んで、葉子とロバートの俯瞰ロングへ。痺れる! ここも“理屈を超えた~”カット。実は、板垣はこういうカットがやりたくてアニメ監督を目指しました!
0:17:59~画面9割を“青パラ”で覆ったジョーのド寄りにOFFでゴングを被せて、次カットで試合中! なんて心地よい展開でしょうか。で、~0:18:45で試合シーン終わり。1分もない!凄い!
0:19:18~ここの汗だくジョーも、本当に良い“杉野(昭夫)顔”! 絶望に独り立ち向かう男の不敵な笑み……。ダンディズム感じます!こんな演出・作画が出来るスタッフも作品も随分と減りました。
0:20:13~「おめえの対戦相手は、——もう何処にもいねえよ」と言われて目を見開くジョー。この時さえも、口元は“笑み気味”に結んで見えます。良い!!
0:24:22~「このままでは終われない」のカーロスを受けて、間髪入れず “繰り返しPAN”ジョーから“同T.U”カーロス! 出﨑監督お得意の呼吸です。
0:25:23~あ、台詞はないけど“少年院時代の力石”回想。これで画としても劇場版力石のラスト。
0:25:40~ぶっ飛んだジョーの滞空時間をスライドで表現。芝山努監督が(出﨑監督に関するインタビューで)仰ってた“引っぱりの出﨑”の技がコレです。憧れます!
0:26:52~窓越しに夕日を眺める葉子。前後の余計な段取りなし。この1カットのみで、しかも後ろ向き。
0:27:43~ここのカーロスは、冒頭のジョーよりさらに大胆に口パクもなしで「おお、そうか……」と無理矢理。この後の0:29:41「オー、スノー……」も。ところで、カーロスの声——TVの中尾隆聖版ももちろん良いけど、劇場版のジョー山中版も好きです。後半パンチ・ドランカーになって、ジョーの元に返って来てからは特に。
0:29:30~「ここで決着をつけようぜ、この公園でよ」受けで、ジョーに視線を送るカーロス。そして雪が降り始めて、ジョーとカーロスが戯れる(?)シーン。荒木一郎音楽による劇場用BGMが大人のムードを醸し出してて、TV版の同シーンより好き。TV版では選曲がジングルベル~で、2人の子供っぽさが強調されてる気がして、それはそれで有りだとは思うのですが、ここは劇場版の選曲の方が良いと思うんですよ。特に0:30:26辺り~この後の悲劇を予兆する様ようで、何処か暗く、悲しくて……。当時、初見で俺はそう感じました。決して単なる“楽しいひと時”で終わらせないと。
0:30:46~見てくださいよ! この大人の男のカッコ良さ!! 後のOVA『ブラック・ジャック』7巻でもテントを出て尻もちを着いたブラック・ジャックが同様の笑みを浮かべます。やっぱり出﨑&杉野コンビは最高!!

 駆け足で色々敬称略。すみません。でっ、またチェックの時間です(汗)!