COLUMN

第842回 アニメ人生、時間が足りない(汗)!

あ、2024年はうるう年なんですね! 1日得した感!

 本当にもう、圧倒的に時間が足りません。このまま行くとあっという間に生涯を終えてしまうじゃないですか!
 今現在いただいている仕事を全部(数本有り)こなすと2027~28年? 53~4歳!? アニメは怖い! 一本一本にそれなりの制作期間が掛かる故、2~3本作ってる間にポンポン歳を取って、10本作り終わる頃にはもう“し”が目の前です!
 だからと言って、一時期のどなたかみたいに年間3本4本5本やってヒットメーカーを気取っていた監督がいいかと言うと、板垣個人的にそれは目指していません。やりたい人はやればいいでしょうが、個人的にはそんな掛け持ち大王になっても、どうせ各作品の自前コンテ本数が減って、自分の目指したい画面の完成度が複数の作品に分散されるだけ、且つ終いには音響にすら行けなくなった例も俺は聞いたことがあります。漫画・ラノベの人気原作を何本も数打って(監督して)、その内たまたま当たった1本を基に周りが持て囃して「ヒット監督」とでっち上げ、その監督自身も図に乗って「売れっ子監督」を名乗り始めて闊歩する時代は大分終わりを告げつつあるようです。新作アニメ情報を見ても最近は、一人の監督があっちもこっちも顔を出してることが少なくなりましたよね。むしろ、時代は各スタジオ(会社)のお座付き? に近い立場の演出家の、我々より1~2世代若い人たちが監督されてることが多くなった気がします(気のせい?)。特に最近はスタッフ不足により品質管理が非常に厳しく、監督2人制も増えたみたい……。
 これはプロデューサー的にもスタジオ的にも良い傾向だと個人的には思います。前々からここ(この連載)で語っているように、作品が売れる売れないは“スタジオ力”もしくは“チームの力”の賜物であって、監督個人の力では絶対にありません!(こちらは断言! え? まだ勘違いしているプロデューサーさんっていらっしゃるんですか?)

 いいですか?

天才も凡人も1日分の持ち時間は24時間で互角なんですよ!

複数本掛け持ちしてイイ気になって自分だけボロ儲けしている自称天才監督様の陰で、リテイクやら指示待ちやらで振り回されて泣いているスタッフは数知れず、だったんです! それを「この監督じゃなきゃ売れないんだから!」とスタジオ側に無理強いしたプロデューサーさんや、特定アニメ監督との癒着で原作を消化するライツ事業部さんらが、10年程前までは多かったように思いますが、今はだいぶ落ち着いた気がします。
 例えば板垣の場合、自ら監督する作品ならコンテは最低半分以上切り(描き)たいし、悪い作画は自ら手を下してでも時間の許す限り修正したいし、音響現場でもできるだけ落ち着いて口を出したいです(現場に来れないなんて論外)。逆にそれくらいやってから初めて監督を名乗るべきでしょう。てとこまでは、何年も前に語ってましたよね? すみません(汗)、話が逸れたので、戻します。

 そんな訳で、50代はもっとやれることを増やそうと考えています。現場の制作体制のさらなる効率化を実現して、その脇で色々自分の勉強やらラクガキやらができる時間を作り、新しい創作に取り組むつもりです。現状の自分に許された枠内での“発信”もしなければ、と。
 発信と言っても、世間に対して身の程知らずに挑む言論活動のことではありません。自分にとって“時間”はお金より大切なので、大して影響力のない舌戦を発信などしている時間ありませんから。まずは集めた人たち(スタッフ)とちゃんと給料を払えるように作品を作ること。これだけは外せません。その責任を全うしつつ、少しだけでも許された時間を大切に使って、短いオリジナルのMVみたいなものを作ろうと思います。内容はなんでもいいか……というより、とにかく現場の人手&力不足を補う原画陣フォローではなく、“自分の作画”仕事をしたいので、「何かメッセージを伝える話」より先に久し振りに純正な作画のをみっちりやりたくて、短いフィルムをまずやりたい! 脚本や物語優先で出来る作品ではなく。

 創作的にもう一息アグレッシブな50代にしたいと思……いや、します!

残りの人生(時間)を丁寧に消化していかなければ、生んでくれた両親に申し訳ないので!