COLUMN

第829回 『いせれべ』の話(16)~新アニメ企画

 お茶濁しやら別のネタやらが挟まり、先延ばしになっていた

『いせれべ(異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する)』の話!

 大雑把にですがいったん締めたいと思います。
 田辺(慎吾)監督の方が先に走って、総監督(俺)が修正で追っかけてきたこのシリーズも、当然最後は追いつき共同監督(演出)作業に。且つ自分の方は作画も兼任。実際の話、作画の質を守ろうとすると本来は演出から手を出さなければならないはず。結局、自分のようなアニメーター出身監督は最終的には演出・作画両方を攻めに行かざるを得なくなるわけです。昨今のスポンサーサイドは、暗黙でそれに期待してたりします。
 『いせれべ』に関しては全話通して、芝居の調整・チェックや撮影・リテイク対応は田辺、アクション系作画サポートとそれらに付随する撮影・リテイク対応は板垣、キャラ修は木村(博美)。おおむねこの布陣で、各話数のそれぞれの状況に応じた作画スタッフを、木村と相談しつつ俺の方で配置。100~200の未着手カット&リテイクカットの交通整理。つまり、その中から板垣ラフ原担当カットを先に抜き、原画に撒くカットと作監に入れるカット、はたまた仕上げデータに直接作監修正するカット、撮影処理も駆使して費用対効果のよい直し方を考えて、最短距離のショートカットを指示するのが自分の仕事でした。1カットでも多く木村作監カットを増やすため、無駄に眠るカットはこちらで解決してしまおうというのが狙いでした(※余談ですが、以前お手伝いした某作に於ける“プロダクションアドバイザー”なる役職はこれに近い仕事内容だったかと)。
 今作『いせれべ』ではEDクレジットで“総作画監督”として木村と連名になっていますが、自分がやってた作業で一番重要だったのはむしろこういった、作画コーディネーター的立ち回りの云わば“作画総指揮”。例えば、エフェクト作画があったら、まず撮影さんのとこに行って「俺の方で煙まで作画するので、画面右上にボケ処理と、ゴミ(タタキ)散らしてください」とお願いし、それを持って「作画スタッフの○○さんに俺のラフを直動画にしてもらって~!」と手配したり。10話のテニスシーンとかも、木村さんの方に「林(隆文)さんのラフを△△さんと□□君に清書してもらうので、その上に顔と手だけキャラ修正お願い! 追い付かないようだったら2人に清書のリテイク出していいから!」と、そこまで指示したりもしました。

何はともあれ、ミルパンセのスタッフ全員、本当によく頑張ってくださり、ありがとうございました!

 現在は『沖ツラ(沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる)』の制作に移っていますが、『いせれべ』の制作体制をさらに効率よく進化させた作り方を色々模索しながらコンテチェックしています。こちらの方も語れる時期が来たら、ということで。

 『いせれべ』に関しては新アニメ企画の告知も発表された以上、また後程続きを語ることになるでしょう。