もう、忙しくてどこまで語ったのか忘れた! ま、とりあえず3話!
いきなりですが3話はEDのスタッフ表記から、自分と木村(博美)の名前が漏れています。コンテ・演出に板垣、作画監督に木村、背景にも板垣がそれぞれ併記されるはずでしたが、あまりの忙しさにスタッフ表未確認で、気付いた時にはV編も終わっていたので、結局そのまま。
つまり1話2話と同じくらい板垣・木村で修正した話数だということ。自分が憶えている中で一番大変だったのは「モブ」。ショッピングモール内の買い物客とか。たとえ作画的には“止め”でも、人をたくさん配置するのはやっぱり大変なモノです。
最近のアニメーターや演出は、交通機関での移動中や歩いてる時もスマホばっか見て、普段街行く人々を観察していないせいか、1枚の画の中に何十人のポーズのバリエーションを描ける人がなかなかいなくて、「こっち向いてこんなポーズだってあるし、あっち見てあんなポーズもあるでしょう?」とスタッフの前で実演・説明して描き直してもらう。で、修正してもらったらもらったで、今度はデッサン・パースがダメ。結局、自分で直しに直しての連続。もう本当にクタクタになってしまい、皆が普段どれだけ“職業人としての観察”を怠っているか? を思い知った話数でした。このモブとの孤軍奮闘は後の話数でも繰り返されることに(汗)。
俺はテレコム新人時代、大塚康生さんから
『太陽の王子 ホルス(の大冒険)』で、哀しみに暮れる村人らのモブシーンを描く時、宮崎(駿)は周りのスタッフたちに声を掛けて、各々演じてもらってポーズのバリエーションを作ってた~
と聞いたことがあります。後に原画修行中、田中敦子・友永和秀両師匠方にも「周りの人たちの観察を普段から怠ってはいけない!」と異口同音に言われていました。そのお陰で癖として「年がら年中観察眼」が備わっているようで、未だに電車に乗ってもイヤホンで音楽も聴かず、スマホも見ずに周りの乗客を観察する癖が抜けません。
そのあたりのスタッフ指導も、次作以降の課題です(ホント疲れた)!
他、3話では“イケメンモデルを投げ飛ばす優夜”のシーンは篠衿花さんが、大魔境での優夜アクションは中島楽人君がコンテの意図を拾ってカッコよく纏めてくれました。まだまだ、力足らずな部分はありつつも、社内スタッフが育っていくのは本当に嬉しいことです。
「全員新人から会社を作る!」と決めたミルパンセでの作品作りは早10年越え。以前は余所様の会社(スタジオ)で好き勝手な凝ったコンテでアニメを作って来た30代——確かに演出や監督でそれなりに動画枚数を掛けたアクションものを作らせてもらえましたし、海外のアニメイベントに招待されるといった副産物(?)にもありつけたりしました。
でも、その頃みたいな贅沢を捨てて、多少不本意ながら枚数を抑えてでも、自ら育成したスタッフで一から作るアニメ作り……今はまだ30点でもこれから40点50点と現場を成長させながら、“理想の作り方”を考え模索し続ける毎日の方が、本来俺の性に合ってるみたいです。過去よさようなら(冗談)!