前回の続き。でも、いくら長時間労働・低賃金だからと言って、
なんでも無条件で現状のアニメーターを高収入にするべきだ! とは微塵も思いません!
例えば作品・コンテンツの増加に対してのアニメーターの希少性を武器に、「丸チョンのラフ原(下描きにも至ってないレベル)を描くだけに月30万拘束なら雇われてあげてもいい」的、上から目線で変なギャラ設定しているアニメーターの話を耳にしたことがあります。
これハッキリ、雇う方(制作会社)・雇われる方(アニメーター)、両方“馬鹿”です!
これ15〜20年昔なら、まだ有望な新人に「その大ラフを基にパーツやディティールを足しながら清書(第二原画)して~」で任せられたし、動画も同様にできました。ただ現状のアニメーター不足状態はアニメ業界全体「キャリア3ヶ月でも早く原画に回せ!」になってるため、“巨匠のお描きになる大ラフ(丸チョン)”は何処の現場でも引き取り手がなく、ハッキリ言ってイイ迷惑。この場合いちばんの被害者は作画監督。で、最近はそういう“現場で迷惑この上ない大ラフ”にパーツやディティール足しをするべく、納品直前に「1週間でいいから!」と制作が引っ搔き集めてきた作監(作監補佐)8〜10人の言い値(何カットやっても1週間で10万)とかに応えた挙句、毎話数80〜100万(動画・仕上げ代も含むと200〜300万)の赤字を作っています。これ、友人・知り合いの制作プロデューサー何人かに確認したところ「そのとおりになってる」と、皆異口同音でした。
つまり、フリーの超上手大ラフに“言い値”を払って、その清書要員としてフリーの作監に“言い値”を払うと。そもそもそこまでお金がかかるなら、逆に最初から各会社(スタジオ)、「新人から社員としてアニメーター育成できるじゃん!」てこと。
いいですか?
フリーの1人は、実は0.5人だと思うべき! なぜなら必ず別作品を掛け持ちしているから!
即ち「フリーのアニメーターを2人捕まえた!」とドヤ顔している制作さん、その戦力“期限付きの1人分”と認識していますか? “言い値”を払ってもらえたアニメーター側もその後のことを考えると、得はしていません。そんな制作会社の足元を見るギャラ設定をしていると、“クソ高いラフ代+クソ高い作監代”が十分“3DCG”を超えた時、さすがの制作会社も「CGの方が安くて正確」と、あと数年で気付くでしょうから(もう既に気付いて社内でCGによるラフ原を生産中の会社も自分は知っています)。
要は互いに未来の見えない(?)価格設定~赤字スパイラル。こんなことを繰り返してる制作会社がなんとか協会と手を組んで「もっと制作費を上げて!」と訴えたとて——ねえ? と。有効に使われる気がしませんよね。
だから、アニメーターの方も現状の悲惨さをTwitterとかで愚痴ってばかりじゃなく、己を律して、
会社に協力するし、新人育成も手伝います! 且つ毎日定時に入るから専属の社員か固定給で雇って!
と付き合いのある会社(スタジオ)に申し出てみませんか? 何も一方的に会社に頭下げろと言っているのではありません。“一緒にアニメ作ろう!”と、話し合って、一旦は会社(スタジオ)の利益に繋げてから、その上で正当に報酬を上げていく交渉をする方が“今は”良いと思います。“今は”と強調しているのは、自分自身が30〜40代半ばまでフリーでやってたから分かるのですが、現状の業界が“テクノロジーの過渡期”に見えるからです。アニメーターに限らず演出家も会社に毎日入って仕事する方が「日進月歩のテクノロジー最新情報」が知れるし、それを使うことができて、即制作体制に反映させられるからです。因みに板垣は現在、ミルパンセの社員。毎日毎日“新しい作り方”の模索中です。作り方から改造できると、監督のやり方も常に新しくしていけて、結構……いや、かなり面白い!
そろそろ、各会社側も“その所属アニメーター○○人でできるパフォーマンスを計算した上”で、それに見合った作品作りをするべきではないでしょうか?