腹巻猫です。本年もよろしくお願いします。新年のサントラ・トピックスはなんといってもNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の音楽を川井憲次が担当していることでしょう。全曲サントラ・リリースを期待したいです。
1月21日に日本コロムビアから、AIMEX1200シリーズの新タイトル30枚が発売される。ANIMEX1200シリーズとは、日本コロムビアが過去にリリースしたアニメ・特撮サントラを1200円の廉価盤で復刻するシリーズ。これまで170タイトル以上が発売されている。ブックレットは簡略化されているものの、アナログ盤の初CD化作品や入手困難になっているアルバムなどが多数含まれる、サントラファンには貴重なシリーズである。手頃な値段なので、「試しに聴いてみようか」と気軽に購入できるのもがうれしい。今回は7年の中断をはさんでの新タイトル・リリースだ。
これを記念して、今回から数回に分けて、このANIMEX1200の新タイトルからいくつかの作品を紹介したい。
2015年最初の更新となる今回は『ちびまる子ちゃん MUSIC COLLECTION』。
『ちびまる子ちゃん』は1990年1月から放映されているさくらももこ原作のTVアニメ作品。1992年9月まで第1期が放映されたあと、中断をはさんで1995年1月から第2期がスタート。現在も放映が続いている、『サザエさん』『ドラえもん』と並ぶ日本の国民的TVアニメ作品である。
音楽は中村暢之が担当。中村は広島県出身で東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。TVドラマ、アニメ、CM等の音楽を数多く手がける作曲家だ。プロの音楽家としてのデビューはTVアニメ『パタリロ』(1982)のエンディングテーマ「美しさは罪」(作曲・伊藤薫)の編曲の仕事だったという。映像音楽ではTVドラマ「無邪気な関係」(1984)、「おんなは度胸」(1992)、TVアニメ『南国少年パプワくん』(1992)、『ムカムカパラダイス』(1993)、『魔法陣グルグル』(1994)、『ハングリーハート WILD STRIKER』(2002)などの作品がある。
サウンドトラック盤は1996年11月21日に『ちびまる子ちゃん』の原作連載開始10周年を記念して発売された。構成と解説は田神悠と大門豊。
収録曲は以下のとおり。
- ハミングがきこえる 〜出演者ヴァージョン〜
- あたしがまる子だよ
- まるちゃん絶好調!
- まるちゃん一生懸命〜theme of chibimaruko I〜
- まるちゃん気分爽快〜theme of chibimaruko II〜
- まるちゃん絶体絶命
- まるちゃん有頂天!
- 大の仲良したまちゃん
- アルプスの少女タミー
- ズバリ丸尾くんでしょう!
- ベイビィ〜、花輪くん登場
- ローラースルーゴーゴーとハマジ
- 火事を振り払え永沢くん
- 愛をつかめ藤木くん
- 立て!立ち上がれ山根くん
- ……野口さん
- 友蔵&ヒロシ
- おかあさん
- まるちゃん一件落着
- あっけにとられた時のうた 〜出演者ヴァージョン〜
- サブタイトル音楽/アイキャッチ音楽コレクション
- 予告編音楽コレクション
『ちびまる子ちゃん』のBGMは放映開始当初67曲が作られたあと順次追加されて、1996年の時点で200曲以上の曲数があったという。アルバムにはその中から厳選された20トラック+歌2曲が収録された。1トラックにBGM数曲を収録する構成なので、細かい収録曲数は50曲以上になる。歌はまる子ら出演者が歌う、このアルバムだけの特別バージョンだ。
『ちびまる子ちゃん』のような作品は「音楽で盛り上げよう」というタイプではないので、音楽が突出して耳に残ることはあまりない。が、子どもの頃から観ているうちに知らず知らず耳になじんでいて、突然メロディが口をついて出てきたり、曲を聴いた瞬間に「ああ、あの曲……!!」と思い出したりする。ドラマの邪魔にならず、けれど、しっかりと雰囲気を作り出して記憶に刻まれている。そういう音楽なのだ。聴いていると日曜夜18時の気分がよみがえってくる。
トラック2からトラック7はまる子をイメージしたトラック。音楽メニューは必ずしも「まる子のテーマ」となっているわけではないのが面白い。好奇心旺盛なまる子、ちょっと皮肉屋のまる子、なまけもののまる子、しんみりしたまる子など、まる子の行動や表情が目に浮かぶような曲が並ぶ。マーチやウェスタン調、ユーモラスな曲、抒情的な曲など、バラエティに富んだ曲調ながら、輪郭のくっきりとした印象に残る音楽になっている。
筆者のお気に入りはトラック4「まるちゃん一生懸命」の1曲目に置かれたM4「コミカルな行動」。「くすり」と笑いがこみあげてくるような番組の雰囲気にぴったりの曲だ。 次のトラック「まるちゃん気分爽快」の1曲目M401「元気に登校」は昭和の情景を思い出させるようなノスタルジックなメロディによる軽快な曲。これも本作の雰囲気を代表する名曲のひとつだろう。
トラック6「まるちゃん絶体絶命」はまる子のピンチや怖がる気持ちを大げさに描写する音楽。大真面目に作られているがゆえに笑いを誘う秀逸な曲だ。
トラック8からトラック18はまる子の友だちや家族をイメージしたトラック。たまちゃんがアルプスの少女に扮している場面をイメージしたパロディ風のトラック9「アルプスの少女タミー」が笑える。
丸尾くん、花輪くん、ハマジらユニークなキャラクターが次々と登場するトラック10以降は、中村暢之の本領発揮! と呼べるトラックだ。バラエティに富んでメロディアス。ユーモラスだけど下世話に落ちず耳にやさしい。続けて聴いていて心地よいのだ。これは『ちびまる子ちゃん』のような作品の音楽になくてはならない音楽性だと思う。
筆者のお気に入りはジャジーな曲調が怪しい雰囲気をかもしだすトラック16「……野口さん」の1曲目M113と2曲目M405。お笑い芸人を目指す野口さんの怪しい面白さにズバリはまっている。
アルバムのラストにはボーナストラックとしてサブタイトル、アイキャッチ、予告編音楽が収録されている。かゆいところに手が届くような構成がうれしい。
中村暢之の音楽は『ちびまる子ちゃん』という作品になくてはならないものとなり、2006年に放映された実写ドラマ版「ちびまる子ちゃん」や劇団飛行船によるマスクプレイ・ミュージカル「ちびまる子ちゃん」の音楽も中村が手がけている。その原点が詰まった「ちびまる子ちゃん MUSIC COLLECTION」。国民的アイドル(?)ちびまる子ちゃんワールドを楽しむアイテムとして一家に1枚そろえてほしいアルバムである。
なお、『ちびまる子ちゃん』の音楽ではキャラクターが歌う挿入歌・キャラクターソングも印象深い。おじいさん(青野武)が歌う「おいぼれじいさんのテーマ」、お父さん(屋良有作)が歌う「ヒロシ天涯孤独のテーマ」、山根くん(陶山章央)が歌う「胃腸のマーチ」、野口さん(田野めぐみ)による「野口さんのお笑い音頭」など名曲・怪曲が目白押し。これらのほとんどは中村暢之が作曲したBGMにさくらももこが歌詞をつけたものだ。長らく商品化されなかったが、2004年にポニーキャニオンから発売された「まるまるぜんぶちびまる子ちゃん」にまとめて収録された。ぜひ「ちびまる子ちゃん MUSIC COLLECTION」とあわせて聴いてほしい。
ちびまる子ちゃん MUSIC COLLECTION
COCC-72269/1200円/日本コロムビア
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まるまるぜんぶちびまる子ちゃん
PCCA-80032/2500円/ポニーキャニオン
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