●2014年10月19日(日曜日)
この日の練馬アニメカーニバル2014はそれなりにいろいろ達成感があったのだけれど、さすがにくたびれた。
1日のうちに上映とトークのセットが3本。上映が自分のものも含めて17作品、それぞれの解説も行わなければならなかった。
ほんとうは、さらに日芸映画学科の教え子たちの作品上映とガイドトークというのも頼まれそうになっていたのだが、こちらは学科主任の斉藤教授と野村助教に任せることにしてしまっていた。
上映の最初はアヌシー国際アニメーション映画祭の最近の受賞短編4本。練馬区の「アニメ」のイベントなので、こうした質の違うアニメーションを見慣れてないかもしれない観客に向けてガイドトークをしてもらえないか、と頼まれていたのだった。以前、アートアニメ系短編のコンペティション審査員も何度かしていたので、それなりにしゃべれそうな感じもあった。
次は、自分が昔かかわった『名探偵ホームズ』の1本を上映しつつトークという時間があって、思えば練馬区江古田の映画学科の学生だった頃に脚本を書いたものだったから、これもこのイベントに絡めてしゃべることはできそうだった。何より氷川竜介さんが対談相手を引き受けてくださったので、ありがたかった。この時間の中で、『この世界の片隅に』のほんのさわりだけでも中間過程を披露できればと思い、映像の準備もしてあったのだが、実は去年の練馬アニメカーニバル2013でも、『名探偵ホームズ』の別のエピソードと、『この世界の片隅に』の40秒程度のPVを映している。このときにトークの相手は小黒祐一郎さんだった。
問題は今回の「『この世界の片隅に』のほんのさわり」だった。ある程度原画は進めてはいるのだが、キャラクターデザインをねばっているところでもあり、松原さんの画風が、『ああっ女神さまっ』『エヴァンゲリオン』から、だんだんとこうのさんの絵に慣れて徐々に頭でっかちキャラに移行している最中のところだったりする。松原さん本人も、
「あと、1段階か2段階進めば、もっと頭がでかくなる、はず」
と、いっているので、きちんとした本番カットの完成品みたいなものは、もう少し予断を挟まれないようになってからお披露目したい。そこでその前段階として、原撮みたいな感じの映像を自分たちで編集して作ってみた。
この日の朝、本番の上映環境で試写してみたら、必要以上に圧縮がかかりまくった映像が映し出されてしまった。映像の制作手順は去年同じイベントで上映したものと同じだったのだが、去年はパソコンのデータで映像を持ち込んでいたのと違い、今年はDVDで持ってきてしまったのがまずかった。もともと圧縮された映像の上に、さらにDVDに焼くときにさらに圧縮がかかってしまったのだった。その辺の違いが我慢できない程度にまで出てしまっていた。
たまたま、日芸の野村助教が来たので、事情を話したら、非圧縮で編集できるかもしれないという。ただ、元データを南阿佐ヶ谷まで取りに行かなければならず、野村君のほうも江古田の日芸までそれ用のソフトの入ったパソコンを取りに行かなければならない。
ようやく圧縮のかかり具合がそこそこな映像に作り直せたのが、お昼頃。間に合ってよかったのだが、もう少し良い画質で作らなくては申し訳ない。
とにかく、裏の方ではそんなふうにバタバタしていた。
この日、最後の自分の仕事は、文化庁メディア芸術祭の受賞短編の上映とガイドトークということだったのだが、事前に映像を手元まで送ってもらったら、13本もあった。さらに、ほとんどが「アニメーション部門」以外の作品ばかりだった。インスタレーションの紹介映像なんかも多く含まれていた。たしかに映画学科の映像専攻の講師もしているので、非アニメーション系映像についてコメントしなければならない局面もそれなりに経験してきているのだが、さすがに縄張り違いな感じもした。
イベント事務局に問い返してみたら、
「そのアニメーションではないボーダーの内側外側にあるものを語っていただくことで『アニメーション』となんなんだろう、というその本質が見えてくるようなガイドトークを期待したいんですが」
といわれてしまった。
わかりました、わかりました。ただ、そういう観点から解説するとなると、60分のコーナーの中で映像が45分、喋れるのが15分では心もとなすぎる。はじめから2本減らして11本にしておいてもらえないでしょうか。それでもできるのかどうか覚束ないのだけれど、11本目はこのプログラムの中で一番アニメーション作品であるといえるものなので、ここまではなんとか含めたい。しかし、解説の中身に細心の用意が必要なのは変わらない。
自分の中のテンションを高めて17時半からのこの日最後の上映イベントに臨んだのだが、11本目終了が18時30分ジャスト。お客さんにもそれなりに耳を傾けてもらえていたようだったし、これでご指名いただいた任はなんとかこなせたのだと思いたい。
家に帰って晩ごはんを食べようと思ったが、全然気力が残っていない。カップ麺みたいなものをすすって、すぐに寝てしまった。さすがに電池が切れた。
●2014年10月20日(月曜日)
昨日の今日なのでくたびれたまま、週明け最初にやらなければならないこととして、江古田の日芸の授業をこなす。ディズニー『レスキュアーズ』(邦題『ビアンカの大冒険』)を上映して、解説。ディズニーのナインオールドメン最後のフランク・トーマス、オーリー・ジョンストンの事実上の引退作であり、ここから出発して『NEMO』制作の奇妙な体験につながっていった個人的記憶もある作品。
アメリカ的なアニメーションは「常に動かす」のが大前提であって、その縛りの中で、「動き」を「キャラクター表現」に昇華する作業を続けてきた。けれど、それは結果的に「演技」の相対的拡大、「ストーリー」の相対的矮小化を招いていたのではないか。そんなことを喋る。喉がガラついている。
昼過ぎに仕事場に辿り着いたが、まだ電池が切れている感じがする。
早く回復しないと、目の前にある肝心の仕事への集中力が薄れたままになってしまうような気がする。
「今の時点から公開するまで、いや、したあとまで宣伝しっぱなしで臨む」というポリシーでやってきてはいるのだけれど、身が持たないだけならともかく、映画そのものがおろそかになってしまっては身も蓋もない。
●2014年10月25日(土曜日)
練馬アニメカーニバルで映した映像を作ったり、物販をしてくれたスタッフへの小打ち上げということで、新宿でひとつ720グラムの肉をステーキにして食べ放題、という店に一同で赴いた。前に小黒さんに教えてもらった店だ。食べれば何とかなるだろう。
結局この日は、ほかにもカットステーキやハンバーグなどを食べた上でのことではあるのだが、7人で720グラムを3つ。堪能した。
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